17

道が途切れていた所を地面に咲いていたお花で橋を作り、私の体重で沈まないか不安になりながら足を踏み入れてみる。
沈むことも崩れることもなく無事に渡り終えてほっとしていると、バッグの中から低い振動音が聞こえてきた。
恐る恐るバッグの中身を覗く…圏外だったはずの携帯が、何と電波を取り戻しているではないか。
画面を見ると知らない番号からの電話 もしかしたら、地上で私を探している人からだったりするかもしれない。
応答ボタンを押し、そっと端末を耳に当ててみる。


「もしもし」

『もしもし!パピルスですッ!』

「えっ、パピルスさん?どうして私の番号を?」

『そんなの簡単だッ!1から順にボタンを押していったら繋がったッ!ニャハハッ!』

「わぁっ、それはすごいですね!流石、パピルスさんは天才です」

『褒めても今はオレ様の甘くとろけるようなボイスを、電話越しで聞かせてやることしか出来ないぞ!』


分かれた時と変わらない彼の調子に少し安心した。でもさっき聞いたあの会話は?電話してくるのには、きっと何か理由があるのだろう。
ハッキリ彼の声を聞き取れるよう、端末を持ち直して耳に当てた。


「それで、どうかなさいました?」

『えっと…エマ、今どんな格好してるの…?』

「服装ってことですか?パピルスさんとお分かれした時と変わらない…あ、マフラーと帽子と手袋は付けてませんね」

『そっか!友達に頼まれたから聞いてみただけでね…。友達が、エマがマフラーと帽子と手袋を付けてたのを見たって言うんだ』

「へぇー…魔法の力で作り上げた物なので、もう消しちゃったんです。もしかして都合悪かったですか?」

『いや、いいのいいの!オッケー!後は任せて!じゃ、またねー!』


ブツッ…
私の返事を聞かないまま彼は電話を切ったようだ。
パピルスさんのお友達かぁ。スノーフルにいた誰かだろうか?彼のことだから、私をその人に紹介するなんて言うのかもしれないし、消さない方が分かりやすくて良かったのかも。
携帯をバッグにしまい、再び歩き始めた。


***


壁に"願いの間"と書かれている。
周りには所々にエコーフラワーが咲いていて、とても神秘的だ。まるでゲームの世界にでもいるかのようでワクワクしてきた。
エコーフラワーがさやさやと何かを話している。真っ先に目に映った花に耳を傾けてみる。


『…遠い昔、モンスター達には夜空の星に願い事をする習慣があったの
 心を込めて願えば叶うと言われていたのよ
 だけど、今は…いくら見上げたって天井に光る石しか見えない…』


その言葉を何度も繰り返している。
星に願いを込めるなんて本当にロマンチックね。今の冷めきった現代人達も見習って欲しいくらい。なんて、私が言えたことじゃないのかもしれない。囁き続けるエコーフラワーに自分の口をそっと近付ける。


「…例え今の状態で願いを込める事に意味が無かったとしても、いつか必ず叶う。希望を捨てないで、信じ続けていれば、きっと報われる日が来るの」


言い終えた後に何だか恥ずかしくなってきた。
でもきっとそう。願いはこの天井を越えて、星が皆の願い事を聞いてくれているに違いないもの。
…私も何だかんだでロマンチストなんだろうな。サンズの言う通りだったわ。


ずっと歩いて行くと、そこそこに咲いているエコーフラワー達が最後に聞いた言葉を話し続けている。
そんな中、天体望遠鏡がぽつんと一つ置かれていた。
少し気になったので覗いてみると、きらきらと光る石が沢山輝いていているのが視界いっぱいに映ったのだ。
これがさっき聞いた光る石なのだろう。

端の方に動かしていく。
ぼんやりと、"かべをしらべて"という文字が浮かんでいるように見えるが何の事だろうか?
望遠鏡から目を離して、奥に進んで行ったら行き止まりに当たった。
どうしたものかと壁をじっと眺めていたら、突然大きい音がして穴が開いた。
ああ、なるほどそういう事!本当にゲームのダンジョンみたいで楽しい!

そこを潜り抜けていけば、また壁に文字が刻まれている。
古代文字のようで。うーん、私には読めそうにない…
それらをざっと眺めてみた。最後の壁に何だか見ていて不安になるような、奇妙な生物の絵が描かれている。
周りに誰もいないか確認して、カメラを取り出してその壁を写真に収めた。