ハァッ…ハァッ…
ひたすら走り続ける。
真っすぐ続く道も、複雑にうねったり直角になった曲がり角も、広い道も…それはもう死に物狂いで必死になって走り抜ける。
私は今、鎧を身に纏った人に狙われ、追われているのだ。
そう アンダインさんに。
次々と下から突き出てくる槍を間一髪の所で避けて、どこか身を潜められないか探しているが……もうっ、どこにも何も無いじゃない…ッ!
どうしてこうなったのだったか…?
***
「よお、そこのライターちゃん。こいつで面白いモンが見れるぜ。寄ってかないか?」
「いいえ、もう望遠鏡を覗くのには満足したから大丈夫。こんな所で何してるの?」
「望遠鏡ビジネス、っていうのを始めてみたのさ。しかもこれはただの望遠鏡じゃない、プレミアム望遠鏡」
「如何にもぼったくりっぽい名前ね。どうせ一回50000Gとか言うんでしょう」
「まっさか。アンタにはお友達料金でタダにするよ。これなら損は無いだろ?」
「うーん…まぁそれなら、ちょっとは?」
どこから現れたのやら。
道中で再びサンズに出会い、望遠鏡で騙されたり…
またパーカーのお礼をし忘れたのは、彼のせいだということにしておいた。
(最低)
(面白いだろ?写真でも撮ってやろうか。今流行りの、ナントカ映えっぽくて最高だぜ…?)
(もうサンズのナントカビジネスは信じないから)
***
エコーフラワーがきらきらと沢山咲く綺麗な道を歩いている途中、パピルスさんから再び着信が。
この辺りから色々ややこしく、雲行きが怪しくなってきたのだと今になって思う。
『さっきエマがどんな格好してるか、聞いたでしょ?
えーっと…それを知りたがってた友達はね…
エマに…「殺人願望」を、抱いているんだ…』
「…はい?」
『だけどエマはそんな事とっくに知ってたよねッ!だから彼女には、エマがマフラーと帽子と手袋を身に付けてないってちゃーんと伝えておいたよ!』
「ちょ、待ってください!どうしてそこで本当の事を教えちゃうんですか!?」
『エマはお利口さんだから、きっともう着替えてるでしょ?これでエマは襲われないし、オレ様も嘘は吐いてないッ!誰も裏切ってないよッ!』
「え、ええー…まぁ、はい。分かりました。今からマフラーと帽子と手袋、付ければ大丈夫なんですよね」
『あ、待ってッ!それだとエマに手間を掛けさせちゃうし、オレ様が嘘吐きになっちゃうから…今友達に、エマはマフラーと帽子と手袋を身に付けてるって連絡してみる』
「そういう事でしたら…お言葉に甘えます。わざわざご連絡、ありがとうございました」
***
おかしいじゃない。
私は今、マフラーも帽子も手袋も"身に付けていない"のに、狙われているの。
パピルスさんは殺人願望を抱いているというお友達に、私がマフラーも帽子も手袋も"全部身に付けている"と連絡をしたのでは無かったのか?まさか私は騙されている?試されている?
それはちょっと、いや、かなりショックね…まだ連絡がついていなかったのかもと思いたい…
息も切れ々になり始め、普段走ることのない身にはもう体力的に限界を感じる。
道が段々一本道へと変わってきて、ひたすら真っ直ぐに走った。
どこかに抜けなきゃ…!
「ぅ、嘘…」
走り着いた所は道が途絶えていた。
背後からガシャン…ガシャン…と、重い金属の音が近付いて来ている。
下を覗いてみたら黄色い物が見えた。下にはまだ何かがあるのだろうか?
もう、こうするしかない…一か八か、私は意を決して飛び降りた。