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…あそこの…が

それって…

……ったんだ…だよ 


微かに話し声が聞こえる
何だっけ 聞いたことがあるような


***


ゆっくりと目を開くと陽の光が私を照らしていた。
ここは天国?やはり私は死んでしまったのか。
身体を起こすと周りには黄色い綺麗な花が沢山咲いていてこれがクッションになってくれたらしく、身体の痛みをあまり感じなかった。
あ、死んだから痛みとは無縁なのかな。

助けを求めようと幸い損傷が無かったバッグの中から携帯を取り出して、画面を覗いて確認する。
しかし圏外で時間も「‐‐:‐‐」となり、正確に表示されていなかった。
上を見上げれば天高くに太陽、辺りを見渡すと一本道。
その先に何があるのか分からないけれど、進んでみないと私はここで時を経て餓死してしまうだろう。それだけはごめんだ。
そうだ、仕事も兼ねての調査だと思えばいい。楽しい遠足…とまではいかないけど、童心に返って探検してみよう。もしかしたらこの先は上への出口に繋がるかもしれない。
そう信じて立ち上がり、ショルダーバッグを肩に掛け直して歩みを進めた。


***


コツ、コツ、コツ
トンネルなのだろうか、履いているブーツの低いヒールの音が木霊する。それにしてもそこまで暗くないような…目が慣れてきただけだろうか。
暫く進むと大きな門が聳え立っていた。こんな所に何で立派な門が?これも貴重な資料だ、残しておこう。バッグからカメラを取り出して構えるも、暗くて分かりづらかったのでフラッシュを焚いた。

門を潜り抜けて更に進んで行くと、一か所だけ私が落ちて来た花の所のようにぱっと明るくなっていた。あそこもきっと陽の光が当たってるんだな。
自分が今どの辺りにいるのか見たところで分からないだろうけれど、地上が見えるならそれだけで安心出来ると思いそこを目指した。
足を一歩光の所へ踏み入れた、その時だった。


「ハロー!」

「わっ」

「おやおや。キミはニンゲンだね?」


ぼこっと地面から突然顔を出したのは、先程クッション代わりになってくれた黄色い花に顔が付いたような、言葉を話す植物だった。


「花と話すなんて初めて……すごい貴重な体験!ビッグニュースね!」

「えっ」


これは大チャンス!まずは意思の疎通が出来るのか試してみよう!
私はバッグの中から名刺とメモ帳、ペンを即座に取り出してお花に迫った。


「私こういう者なんですけど、良ければお話聞かせて頂けませんか?お手間は取らせませんし、悪いようには致しませんので」

「は?何なの?ボクこう見えて「意思疎通が可能。イビト山の大きな穴に落ちたら喋る花と遭遇。しかも会話が出来る。これはとんでもニュースBEST100にだって選ばれてしまう勢いね…あ、すいません。お話途中でしたよね?どうぞ、続けてください。一語一句聞き逃しませんので。」

「…はぁ、キミの相手するの何か疲れる。もういいよ先に進んで」

「せめてインタビューだけでもさせていただけ……」


お花さんは土へ潜り込み、完全に姿がなくなった。ぽつんと一人その場に取り残され途端に静寂が訪れる。
折角のチャンスだったのに迫りすぎてしまったのだろうか。
取材する側される側である以上、近付きすぎないのが暗黙の了解。距離ぐらい弁えないといけないか…
一人で反省会を開きながら再び歩みを進めた。