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少し進むとさっき見たのと同じ大きな門が聳え立っていた。これも念の為写真に収めようとカメラで撮影する。
撮れた画像を確認してみるとそこに映っていたのは、門から白いモフモフとした手がこちらに伸ばされている写真だった。
何これホラー!?私そっちは専門じゃないのに…
一人画像を眺めて震えあがっていたら、前からぽんっと肩に何か置かれたような感覚が。
恐る恐る目線を肩の方へ移すとそこには何とこの写真と同じ白い手…


「ひっ!?」

「まぁ、こんなに震えてしまって……ごめんなさい。驚かすつもりは無かったの」

「ぁ、…貴方は…」


バッと前を見れば、門を越えた所で白い山羊のような人が立っていた。着ぐるみ…?
二足歩行をする白い山羊さんは私の肩に置いていた手を引っ込め、申し訳なさそうに眉を下げながら私に語り掛ける。


「私はトリエル。この遺跡の管理人です」

「遺跡…ここは遺跡なんですか?」

「ええ。毎日ここを見回って、上から落ちて来た子がいないか確認しているの」

「イビト山にこんな遺跡があったなんて…トリエルさん、是非ここの事をお聞かせ頂けませんか!」

「まぁ、それはいいわね!私お喋りは大好きなの。落ち着いて二人でお話が出来る場所があるわ。さぁ、こちらへいらっしゃい。」


遂にインタビューが出来る。
しかも一対一ということは、深い所までお話出来ることを示すGOサインだ。ようやく本格的な取材の開始だと、嬉々としてトリエルさんの隣に付いて遺跡の中を歩いた。

遺跡には侵入者防止の為のパズルだとか落とし穴だとか、様々な仕掛けが仕組まれているらしい。
道中で大きなカエルだったり、虫だったり、野菜だったり…喋る者達と遭遇した。
この人達にも取材して回りたいところだが、今はトリエルさんとの対談が先だ。後で皆さんにもインタビューをしよう。
何かある度に立ち止まり、メモ帳とペンを取り出してはメモしたり写真を撮ったりしていると、クスクスとトリエルさんが笑った。


「もしかして撮影禁止でしたか…?」

「いいえ、そんなことはないわ。アナタが興味津々で色々な物に触れようとしていて・・・見ていてとっても微笑ましいと思ったの」

「…仕事柄気になっちゃうタチでして」

「そうだ。アナタのお名前をまだ聞いていなかったわね。教えてくれるかしら?」

「あ…と、遅れまして大変申し訳ございません…私、こういう者なんですけれども」

「あら、ご丁寧にありがとう。このライターっていうのは、地上でのお仕事の名前?」

「ええ。雑誌の編集をやっておりまして、再来月からの出版分でイビト山の特集をするんです。なので今回は調査に伺いに参りました」


私が取材の件について言うとトリエルさんの表情が一瞬曇った。やはり踏み入ってはいけなかったのかな。
そう思ったのも束の間、彼女の顔はすぐにさっきと同じ優しい表情に戻った。


「そうだったのね。…ここの事なら、お話が尽きないかもしれないわ」

「是非何時間でもお聞かせ下さい、ここの魅力を十二分に綴らせて頂きますので!」

「ふふ、それは素敵。私のことは呼び捨てで構わないのよ。それと堅い敬語なんかも使わなくていいからね」

「それは…私は取材する立場ですし、」

「その方が物腰柔らかく、楽しくお喋り出来るでしょう?だからいいの。ね?」

「…分かったよ。ありがとう、トリエル」

「どういたしまして、エマ」


少しどころか大分気が引けるが、言われた通りに敬語無しの所謂呼びタメで話すことに。
それから遺跡の話を交えながらトリエルの隣を歩くこと数分 大きな家のような物が建っている場所にやって来た。
遺跡の中に家?というか家なのか?いやお城とかでしょう?
別角度からの写真を何枚も撮影している間、文句も言わずに待ってくれていたトリエルに申し訳なさを感じながら頬を掻く。


「つい興奮しちゃって。ごめん」

「ふふふ、もう慣れたわ。何事にも挑戦出来るのは良い事よ」

「いやぁそんな、はは…」

「さぁ、こっちよ。いらっしゃい」


扉も無いその建物の中へ入るトリエルに続いて私も中へ入った。