ふと、目が覚める。
あれからどれぐらい時が過ぎたのか。それさえも分からない位、長い時間このベッドで過ごしている。
毎日朝、昼、夜の決まった時間になると、必ずロードがやって来ては私を苛める(?)。
過激なDV的な時もあれば、ただ私をじっと眺めて去って行く時もある。
私は人間なのでお腹も減るし、少しでも身体を動かしたい。
そんな時はドギーくんがご飯を運んで来てくれたり、部屋の中で出来るような遊びをしてくれる。
昨日は、高速アルプス一万尺をマスター出来るまで付き合ってくれた。
ドギーくんの超スピードに私が付いて行くのが精一杯だった。彼にはそんな特技があったんだなぁ。
何はともあれ、ドギーくんは少しずつ私に慣れてきてくれたようだ。
・・・あれ、おかしくない?
何で私はこんな生活に慣れ始めているんだろう。まず、ここから出ること考えた方がいいよね?
どうして今まで気付かなかったの。
でも出たところでどうなる?外がどうなっているのかも分からないのに?
私の見知った顔に会えるのかすら分からないのに・・・もしかしたら、見知った二人が遊びでこんなことをしているのかもしれないのに?
駄目だ。考えたところで良い策も何も思いつかない、諦めよう・・・。
そろそろドギーくんが朝ご飯を持って来てくれる頃だろう。メニューは決まってあれなのだが・・・
胃に何も入れないよりかはマシだ。文句を言えば、殺されるかもしれない。
バンッ!と勢い良くドアが開いた。ドギーくん、今日は情緒不安定の日かな。
音がした方へ目を向けるとそこに居たのはドギーくんではなく、手の平に何か乗せているロードだ。
「朝飯持って来てやったよ。有り難く思ってよね。」
「ドギーくんは?」
「何?ボクじゃ不満なワケ?」
「イエ、ソンナコトアリマセン。ロードが持って来てくれるなんて思わなかったから、びっくりしちゃって。」
「駄犬は、・・・どっか行ってる。行先なんて知らない。アンタに餓死でもされたらつまんないし、仕方なくボクが持って来てやったの。」
「はは・・・うん。ありがとう、ロード。」
「勘違いするなよ。玩具が動かなくなったらつまんないだけだし。わざわざ持って来てやってるんだから、早く食べろよ。」
「はあい。いただき・・・」
目の前に置かれた物の蓋を開けてみると、中には見慣れない物が。
そこにはフレンチトーストの上に生クリームとチョコソース、それからこれはラズベリーソース?今の女の子達で言うSNS映え抜群の一品が、綺麗に飾り付けられてお皿の上に乗っていた。
いつものじゃない。すごくおいしそ・・・あっいやいつものがまずいとかじゃなくて・・・
「・・・何さ。」
「何かいつもと違うなって思って。オシャレだね。」
「フフン、でしょう。ボクが作ったんだから。」
「そうなんだ!美味しそうだし見た目も可愛い!本当に食べていいの?」
「食べないなら、ボクが自分で食べるけど?」
「滅相も無い!いただきまーす!」
久しぶりにこんな物を食べれるなんて!私の中に存在する微量の女子力が、テンションを上げている。
写真に撮ってSNSにでも投稿したいところだけれど、生憎携帯をどこかに置いてきてしまった自分が悔やまれる。
小さな籠に入れられたナイフとフォークを取り出して、フレンチトーストに切れ目を入れる。
食べやすい大きさで格子切りにしていくと、ゆっくりと生クリームが崩れていく。それがまた見ていて楽しい。
一口分をフォークで刺して、口に入れる。
程よい蜂蜜の甘さと重過ぎない生クリームの絶妙なバランス、そしてチョコソースとラズベリーソースで、これはもう女の子のハートを鷲掴みに出来る最高の一品だ!
あまりの美味しさに舌鼓して、食べる手が止まらない。
「美味しい。ロードすごい!」
「ミャハハハ!ボクに出来ない事はないのだ。」
「ふふ。何でも出来るんだね、ロードは。」
「なっ、あっ!気安く触らないでよっ!」
無意識にロードを撫でると、バシッと手を払い除けられた。
身体を震えさせるロード。まずい、もしかして殺される・・・!?
目を堅く瞑り、次に起こり得ることを予想して身構える。
が、何も起きなかった。
恐る恐る目を開けるとそっぽを向いたロードが、口をわなわなと動かしている。
そしてキッ、とこちらを睨んで大きく口を開いた。
「つ、次やったら殺すからね!」
「ひぇぇ・・・わ、分かったよ、ごめんなさい気を付けます!」
「フンッ!」
ロードは私のベッドから飛び降り、再び大きな音を立ててドアを開け、部屋の外に出て行ってしまった。
いつもよりヒールのコツコツ音が激しいような気がした。
悪いことしちゃったかな・・・癖で褒めたい対象の人の頭を撫でたくなるんだ。気を付けよう・・・。
残ったフレンチトーストを頬張りながら、昼にロードがやって来た時にどう対処しようかと考えるのだった。
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(2017/09/29)