そして君はこう言うでしょう

最近ウチの犬が家を留守にする頻度が増えたおかげで、ボクが人間の世話をするハメになった。
この人間、ボクがやれって言った事をやらないから本当に気に食わない。
反抗する度に痛い目を見てる癖に、何で学習しないんだろう。馬鹿なんじゃない?


「それ、本人の前で言う?」
「言った方が覚えるでしょ。アンタ低能なんだから。」
「そんなでっかい悪口、私傷ついちゃいそう。」
「別に悪口じゃないし。素直にボクの言う事聞いてればいいじゃん、って言ってるんだよ。」


ベッドから上半身を起こしている人間に着けた首輪を雑に引っ張ると、うぇっと鳴いた。
最初に首を絞めた時もこんな声だったし、もっとまともな声は出せないのかって思う。
それにこいつ・・・太らないな。餌は与えてる、ずっとベッドで生活させて外に出したことも無い。人間は肥える程肉が付くって聞いてたのにつまんない。
人間の腹を爪先で一蹴りするとぐっ、と小さく声を漏らした。
首輪を掴んだまま自分の方に引き寄せて、人間の瞳を覗く。
驚きか恐怖か、目線が泳いでいる。


「ちょっと、目を合わせないのは失礼なんじゃない?」
「だって近いし・・・そりゃ逸らすよ。」
「ボクの目を見ろ。」
「き、綺麗なお星様だね。」
「なっ・・・は!?」
「ぐううっ!」


綺麗?ボクが綺麗で可愛くて最高なのは当然の事で、自分が一番知ってる。
色気もクソも無い人間の口から出た、ボクに向けられたその言葉が妙に響く。
苛立ちのような不快感のような・・・とにかく良い気がしない。
ムカつく、ムカつく、人間の分際でボクを振り回すなんて。
無礼続きの人間に業を煮やして、ギリギリと首を絞めるように首輪を引っ張った。


「げほっ、ちょ・・・何・・・?」
「本当にムカつく。どうしてそんなにボクを苛立たせるの?そういう天才か何か?」
「えぇ・・・っ、褒めたのに!」
「ボクが綺麗で可愛いスケルトンで、ファビュラスなロイヤルガードのリーダーなのは知ってるもん。だからアンタなんかに褒められたって、嬉しくないし。」
「そ、そっか。okay,今度からは気を付けるね・・・?(よく分からないな・・・)」
「フンッ」


おどおどしながらボクの様子を伺う人間の首を開放してやり、ベッドに腰掛け直す。
人間は首輪の位置を直したいのか自分の首周りを気にしているようだが、動く度に首輪と繋がった鎖がジャラジャラと音を立てて煩い。
煩いんだけど、と小さく文句を言えば、ごめんと一言謝罪して動きを止めた。
謝られるのも何か腹立つ。脇腹にエルボーを食らわせると小さく呻いた。


「そんなにどつかなくてもいいじゃん、サンズ・・・。」
「は?」
「あっ」


今、サンズって
どうしてこいつがボクの名前を知ってるの?まさか、駄犬が馬鹿やって漏らした?
教えるつもりが毛頭無かった名前。人間に知られるのも呼ばれるのも嫌だ。
まずこんな軽率に呼んでいいワケが無い。


「知り合いと間違えちゃった。ごめん、ロード。」
「・・・何で知ってるの。」
「ん?」
「ボクの名前、駄犬が言ったのか?それともどっかからコソコソと情報でも仕入れた?」
「まさか、私は此処から動いてないしね。ロードの名前もサンズってい「それで呼ぶな。」あ、うん・・・ごめん。」


ああっもう、謝るなって。
どうしてこうも駄犬と同じように腹立だしく育つの?
もしかしてボクが腹立っている様を虚仮にして、心の中では笑ってる?そう考えたら腸が煮えくり返りそう。ボクの苛立ちが最高潮だ。
低能で物覚えの悪くて弱い人間が、このボクの名前を気安く呼んだ挙句、ボクを嘲笑うなんて・・・許されない、絶対に!!


「アンタねぇ!人の事馬鹿にするのも大概にしなよッ!」
「えっ、馬鹿になんてしてないよ!?」
「嘘吐くな・・・ボクが苛立ってるのを見て楽しんでるんだろ!!」
「何それ最低人間過ぎない!?私はそんな・・・そうだ、私の名前も教えるから早まらないで・・・!」
「はぁ?アンタなんか((見せられないよ!))人間でしょ?名前もクソも無いし。」
「酷い・・・私には、れっきとしたヒロインって名前があるんだからね。」
「あっそ。別に興味無い。」
「う、うん。でも、覚えててくれたら嬉しいかも。」


そういえば、初めてこいつの名前聞いたな。別に知りたいとも思わなかったけどさ。
ていうか何よ、ボクの怒りと人間の名前引き返って。意味分かんない。もう興醒めした。どうでもいいや。
・・・まぁ名前ぐらい呼んでやらない事もない。
ヒロイン、と小さく呼ぶと、人間の顔が段々笑顔になっていく。


「あ、な、何?」
「何嬉しそうな顔してんの、気持ち悪い。」
「やっぱり人間って呼ばれるよりさ、名前で呼ばれる方が嬉しいなって思って。」
「調子に乗んな。」
「えうっ」


やっぱりムカつく。



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(2017/11/03)