それ以下だった話
「ニェ〜、ヒロインはお寝坊さんだなぁ!サンズの怠け癖が移ってしまったのか?」
「ほう、俺色に染まるっていうのも悪くないな。」
「サアアアンズッ!!」


騒がしいなぁ 私はもう少し寝たいのに。

朝にはパピルスが私を起こしにやって来る。
眠いと言って二度寝する私。朝の光から逃げるように布団を被って丸くなると、パピルスが布団を剥ごうとする。
必死になるパピルスがなんだか面白くて、サンズと二人で笑い合う。
それが私の日常だった。

そう、“だった“。



「ヒロイン起きろ!朝だぞ!」
「ぅぐっ…わ、分かったから、お腹の上に乗らないでサンズ」
「起きろ起きろ起きろぉ〜!」
「ぐぅぅっ!起きてるってばぁ!」


私の知っているパピルスもサンズも、今はいない。
その事実に、毎朝これが夢なら良かったのにと思わずにはいられない。

私を起こしに来たサンズが布団の上から私のお腹にのしかかり、ぴょんぴょんと跳ねる。
いくら骨で軽いとは言え、服も身に着けているし重みが増していてダメージが半端ない。痛い!
起きてるよ、とサンズを諭してあげて、私の膝の上に座らせる。そうすると毎回大人しくなるから、とっても良い子。
落ち着いたサンズは、にこにこしながら私の顔を見上げてきた。


「ん、ご機嫌さんなのサンズ?」
「ヒロインの膝の上は、何だか居心地がいいのだ」
「そう?そんなに良いものでもないと思うけど」
「ハッ、そうだ。おはようのちゅーをしてやろう!」
「だぁめ。私のファーストキスは好きな人とするの」
「ヒロインはオレ様のこと好きじゃないのか…?」
「可愛いしてあげたいでもこの子は多分未成年なんだ犯罪者にはなりたくないしどうしよう(そんなことないよ。)」
「本音と建て前が逆になってるぞ!」


暫く過ごして分かったのは、この世界ではサンズとパピルスだけじゃなくて、アンダインやアルフィス、そしてメタトンやナプスタブルックまでが逆になっているということ。
少し外を出歩けば、見慣れているはずなのに違和感満載の知り合いに出会う。
どうしてなのか考えるだけ無駄な時間のような気がしてきたし、何よりもう私の頭が限界である。
つまり、今こうしてサンズを相手しているが、実質パピルスの相手をしているのと同様ってことでしょ?

ちゅーするー!とジタバタするサンズの額を押さえて、自分の唇を守った。すると諦めたように大人しくなる。
ほっとしてサンズの顔を見ると、むすっとして頬を膨らませていた。あっ、しまった…
あやすようにして頭を撫でてやると、サンズはオレ様は子供じゃない!と言って乱暴にベッドから飛び降りる。


「ヒロインはいつもオレ様を子供扱いする!そんなヒロインは…嫌いだっ!」
「きら…そんな、誤解だよサアアアンズ!」
「あ〜知らない知らない!べーっだっ!」


サンズが足早に、大きな足音を立てながら部屋を出ようとする。止めようと腕を伸ばすも時遅し。
ドアの前まで辿り着いたサンズは、こちらを振り向いて「へっ!」と吐き捨ててから部屋を飛び出た。
更に少し遠くの方でドアが閉まる音がしたので、恐らく外に出たのだろう。
またサンズを嫌な気持ちにさせてしまった。今日帰って来るかな…

一人反省しながらのそのそとベッドから出る。
すると再び、玄関の方からガチャッと音がした。
サンズが帰って来てくれた…早い…でもそんなところが可愛くて好きだよ…!

サンズの部屋から出て、おかえりー!と満面の笑みで両手を広げて待機する。
ぽすっ、と自分の胸元に温かく大きな物がのしかかって来た。ああサンズ…この短時間に随分と大きくなって…

ん?


「おーおー。熱烈な歓迎ありがとさん」
「はっあっ、なっ何でパピjfy☆s@!?」
「やっぱ女の子は柔らかくて良い…あ、ヒロインちゃんって意外と胸あるんだな」
「へ、変態!変態!変態!いやああああ!!」
「ガハッ!こらっ、パーカーの紐で首を絞めるんじゃない!」
「パピルスの馬鹿最低変態女の敵クズ野郎!!何もしないって約束したでしょ!?」
「わ、分かった!分かったから落ち着けって…げほっげほっ!」


サンズだと思って迎えたら、のこのこと家に帰って来たパピルスだった。
仕事を放棄して戻って来て、私に抱き付いてしかもむ、胸を・・・一揉みしやがったの・・・
前に約束した何もしないということをお忘れではありませんか?怒りに任せて、パピルスのパーカーの紐を両方縛って首を絞める。
観念したのか、私の胸元から手を離したので解放してあげた。


「あ゛ー…死ぬかと思ったぜ……」
「自業自得でしょう。またやったら、本当に首の骨折れると思ってて」
「おっかねぇなヒロインちゃんはよぅ。少しぐらい優しくしてくれたっていいじゃねぇか、サンズィみたいにさ」
「サンズは可愛いから別。可愛いは正義なの。分かるよね?」
「そりゃ俺の弟は世界一可愛いリアルスターだけどさぁ。俺だって可愛くしてって言われたら、出来るんだぞっ☆」
「うわっ……パピルスはパピルスのままでいい、その方がマシに見えるから」
「その反応地味に傷付くわ」


パピルスはいつもの様に肩を竦めてからどっこいしょと声を漏らしながらソファに腰かけ、これまたいつもの様に煙草を吸い始めた。
本当に仕事はどうしたの
一応問いかけてみたら「してるさ。家で」と適当極まりない返答が。それはしてないのと同じでしょう。
これに突っ込むのは、元の世界のサンズにあーだこーだ言っているのと同じなので、それ以上はもう何も言わないことにした。

私も今日は特にやることがなかったので、パピルスの隣に腰かけた。
彼は横目でちらりとこちらを見ると何かを企んだようにニヤッとした。…この顔はよからぬことを考えている顔だと私は知っている。
距離を開けようと試みるが、がっちりと肩を組まれていて出来なかった。
私の膝をぽんぽんと叩いて、膝枕してと言わんばかりにこちらを見てくる。この兄弟はそんなに私の膝がお気に入りなのかな。
仕方なくどうぞと言うと、灰皿に煙草を押し付けて火を消し遠慮なしにごろんと寝転がった。
魔法でテレビの電源を着けたが、目もくれていない。ただのBGM扱いのようだ。

彼は私の顎に手を伸ばして、猫を撫でるようにしてきた。
骨の感触が気持ち良い。本人にはこんなこと言えないけれど、この骨のさらさらとした肌触りが好きだ。
気紛れに私も撫で返したくなったのでパピルスの額辺りを撫でる。


「お、何だデレの日か?」
「違うよ。サンズにはしたのに俺には無し〜?とか言われるのが面倒だから、今こうしてるだけ」
「そうかいそうかい。ヒロインちゃんの手は気持ち良いなぁ」


手首を優しく掴まれ、私は撫でる手を止めた。じっと気だるげな瞳に見つめられる。
何だか甘い雰囲気にさせられそうな気がしたので、阻止する為にパピルスの額にチョップした。


「そぉいっ!」
「ぁでっ!今日はひどくバイオレンスだなぁ!?」
「その気にさせようったって無駄なんだから。私は貴方のことを恋愛対象として見てませーん」
「お、そっちの方が燃える物があるし、俺は一向に構わんよ。いつか絶対俺のこと好きになるって」
「何なのその自信…好きな人いるもの。その暴論はあり得ないわ」
「ははっ、なら寝取ってやるだけじゃねぇか。なぁ?」
「…」
「ぐえぇっ!じょ、冗談だから離してくれ…っ!」


パピルスに再び首絞めを喰らわせた直後、申し訳なさそうな顔をしたサンズが家に帰って来てくれた。
二人で顔を見合わせるや否や、お互い同じタイミングでごめんなさいをした。
サンズはお辞儀していた顔を上げると、笑顔で嫌いなんて嘘、大好きだぞ!と大きな声で私に言った。可愛いにも程がある…
こんな世界も悪くはないのかもなぁ・・・いやいや、そんなわけないない。早く元の世界に帰りたい。
今日もどうしたら帰れるのか考えながら過ごそう。



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(2017/10/01)