キッサキシティの近くにあるエイチ湖の調査が、私に任された仕事だった。
調査自体は大した難度ではなかった。しかし、丁度訪れていた寒波は私を非常に困らせた。低温から大切な機材が故障する恐れがあったからだ。
プルートを連れて来なかったことを少しだけ後悔したが、しかし、私は実にうまくやったと思う。
予定よりも早く全工程が終了したので、下っ端たちに先にハクタイのアジトに帰るように命じたのが、今から二日前。
キッサキの街を更に北へ。道もない森をひたすら進んだシンオウの北端に、私はいた。
切り立った崖の下に広がる北の海は、ここよりも更に北の海から流れてきたという流氷に覆われていた。氷の海から吹き上げて来る突風が、私の睫毛を凍らせてゆく。
私が初めてここを訪れたときから、この景色は変わらない。
アイスブルーの流氷は、昨日までの寒波を受けてその面を白銀に染めている。東の空が白み始めると同時に純白に光輝くその様子は、まるで私たちの行く先を明るく照らす銀河のようではありませんか?
「私は今、ここに、ギンガ団の未来を見ました」
雪を踏む鈍い音をたてて私の背後に立ったアカギ様にそう伝える。この純白の光がやがて消え去り、新しい春が訪れるように、私は新しい世界をつくるアカギ様の礎となるのだ。
「勝手な行動をとるな。お前がいなければ計画は進まない」
世界を動かすアカギ様の声が、キッサキの海に春を呼び込む。その神々しくもあたたかい声が、私の胸にも深く染み渡ってゆく。
東風解凍;はるかぜこおりをとく
立春をむかえ、あたたかな風が氷を解かしてゆく季節
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