大学も休みになったし、外はまだまだ寒いし。朝に弱い私は布団の中で丸まったまま何をするでもなく、ただただ曖昧なぬくもりを享受していた。
試験とレポートに追われてろくに相手をできていなかったユキちゃんとたくさん遊びに行く約束をしていたのになあ。いざ試験から解放された私は、一気にダメ人間になってしまっていた。ごめんよーと思いつつ、でも布団の誘惑には逆らえない。

約束を破っていつまでも布団から出てこない私に拗ねてしまったのか、毎日早起きな筈のユキちゃんの声が、今日は聞こえない。
どうしたんだろう、と少し心配になった時、私がかぶっていた布団の中に、何かがもぐりこんできた。私の鳩尾にぎゅうぎゅう頭を押し付ける綺麗な黒髪と、淡いピンク色のパジャマ。

「え、ユキちゃん!?」

しっかり者の彼女が、こんな時間までパジャマでいるなんて。しかも甘えるように私の布団に入ってくるなんて!
パニックを起こしかける頭を落ち着けて、彼女の髪の毛を優しく撫でる。「どうしたの? 私が起きないから怒っちゃった? ごめんね?」と彼女の機嫌を窺うように声をかけると、ユキちゃんは小さな声で「怒ってない」と言った。

「冬が終わっちゃう」

寂しそうな声でぽつりとそう呟いたユキちゃん。まだまだ寒いし冬の真っ最中でしょう、と思ってしまう鈍い私なんかと違って、繊細な彼女はどうやら季節の移り変わりを敏感に感じているらしい。名前の通りに冬が大好きな彼女の小さな体に腕を回す。二人分の体温が、布団の中で溶けてゆく。
とても魅力的なそのぬくもりを、私はしかし諦めることにした。

「……じゃあ、本当に冬が終わっちゃう前にお出かけしよう?」

約束もあるし、なにより彼女の笑顔のためにそう言う他ない私は、なるべく明るい声でそう提案する。彼女は私の鳩尾に顔をうずめたまま、小さく一度頷いた。


土脉潤起;つちのしょううるおいおこる
雪が次第に雨に変わり、大地が湿り気を含みはじめる季節




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