傘をふたつ並べて、土手の上を歩く。「今日もいっぱい避けた?」と尋ねた私に、彼女は薄い桃色の傘を揺らして「そりゃあもう」と大きく頷いた。
その必死さに、思わず私の口元が緩む。傘でうまく口元を隠しながら、私は彼女の愚痴にも近い部活の話を聞いて、うんうんと相槌を打った。

毎日この梅雨空のような気持ちで部活に向かう彼女は、趣味のイラストにかけることの出来る時間が減ってしまったことを心の底から嘆いていた。
しかし、私が「じゃあ辞めたら?」なんて気軽く言っても、花梨は持前の責任感から「でも私、もう引き受けてしもうたし」と言って苦笑っぽく笑うだけ。ぱたぱたと傘を打つ雨粒の音を聞きながら私は、「そっかー」と呑気な声をあげた。

「なんか花梨、あれみたいだね」

私が指差した先の植物を見て、彼女は不思議そうに首を傾げる。
恵みの雨を受けて青々と葉を茂らす草むらの中で、私の指の先にある小ぶりな紫の花の集まる花穂だけが、じわじわと茶色く枯れていっていた。

「あの花はね、この季節に自分だけ枯れて、薬の材料になるんだって」

自分のやりたいことを諦めて、アメフト部のみんなのために頑張る、あなたのようだと私は思った。
花梨はその優しい眦を少し細めて、「私はそんな、大層なもんと違うよ」と小さく言う。彼女の顔はそのまま傘の向こうに隠れてしまったけれど、そこからはみ出した長い三つ編みが一瞬ゆらっと軽快に揺れたのを、私は見逃さなかった。


乃東枯;なつかれくさかるる
夏至をむかえ、夏枯草がかれる季節




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