「テストどうだったー?」
「うーん、まあまあ、かな」

私の質問に煮え切らない返事を返した東峰は、そのまま手にしていた棒付アイスをがりりとかじる。爽やかなソーダ色をした氷菓がみるみるうちに小さくなってゆくのを見ながら私も、カップに入ったバニラアイスを木のスプーンですくって口に運んだ。
首筋を伝っていった汗と、ひたすら知識を詰め込んだ頭の芯が、きんと冷える。

「あと一日かー数学やだなー」
「俺は古典終わったから、ちょっと気が楽かなあ」
「私、今回の古典満点かも!」
「苗字、それ毎回言ってるよな」

坂ノ下商店の影、太陽から逃れる様に壁際に並ぶ私と東峰の間を、むわっとした気だるい風が抜けてゆく。

「いや、今回こそね」
「そっかあ、それは楽しみだな」

私の毎度おなじみの虚栄なんてもうすっかりお見通しの東峰は、やんわりとした口調でそう言った。彼らしい穏やかな声は、私たちの間の気だるい空気によく馴染む。

誰もが待ち望む輝かしい夏まで、あと少しだ。目の前に迫っているきらきらした海や青空も、悪くはない。けれど私はそれ以上に、この気だるく凡庸な夏をとても気に入っている。

きっと私は古典で満点を取れないし、東峰の当たり付きアイスは絶対に外れだろう。
でも、それでいいのだ。ぬるい風と冷たいアイス、気だるいくらいに穏やかな東峰の声。もうすぐはじまる鮮烈な夏の前のしばしの安らぎを、私は贅沢なくらいゆっくりと胸にしまった。


温風至;あつかぜいたる
あたたかく乾いた風が、山から吹き下ろしてくる季節




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