「そいえば、バレー部どう?」

お菓子をつまみながら、なんとなくそう質問した。期末テストも終わり夏休み間近の教室は、進学クラスも例外なく浮き足立っている。その騒がしさに負けないようにしっかりと、彼女は「楽しいよ!」と言って、笑った。

「……仁花、なんか、変わったね」

私のその言葉に、彼女はお菓子を咀嚼、嚥下し終えてから、「え、そうかなあ?」と答え、照れたように少し頬を染める。ほら、やっぱり、変わったよ。少し前までの彼女なら、そんなことないよ! と慌てふためきながら私の言葉を否定したことだろう。
自分のことを異常なまでに過小評価するきらいがあった少女は、もうどこにもいなかった。この変化の原因は、今まで何度も彼女の背中を押してきた筈の私ではない。それが少しだけ寂しかったけれど。

「そうだったら、いいな」

そう言って笑った彼女の顔を見ていると、そんな矮小な思いも吹き飛んだ。雛鳥が巣立ってゆくのを眺める親鳥は、こんな気持ちなのだろうか。私は「お母さんは嬉しいわ」なんて冗談めかして言って、笑う。
彼女がこれから飛んでゆく広大な空が、どうか美しくありますように。


鷹乃学習;たかすなわちわざをならう
鷹の幼鳥が巣から出てきて、飛び方を覚える季節




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