部活上がりらしい英から電話があったのが15分前。当初の連絡から少しばかり遅れてうちにやってきた彼を見て、私はため息交じりに笑った。
「なんか、夏も終わりって感じするわ」
とっくに鳴いていたツクツクボウシよりも鮮烈に、急に涼しくなった明け方の空気よりもはっきりと、私に夏の終わりを連れてくるのは幼馴染の英だ。
「先に部屋上がってて」
部活で疲れているのか、いつにもまして眠そうな英にそう言ってから、私は台所に向かう。
毎年、私の夏の終わりは宿題をどっさりためこんだ英とともにやって来る。なんでこんなにためるの、と小言を言うのは、一昨年でやめた。計画的に宿題をやれ、と言ったところで英は変わらないし、なにより、英がためこんだ宿題をするためにうちに来なくなってしまったら、私はうまく夏を終わらせることが出来なくなるような気がするのだ。
お盆にコップを二つ乗せて麦茶を注いでいると、それを見た母親がカレンダーを一瞥してから「あ、英くん?」と言ってから、ふっとその眦を和らげる。
「夏ももう終わりね」
母のその言葉に、私は苦笑交じりに頷いた。どうやら苗字家は、家族ぐるみで英に毒されてしまっているらしい。
私は母に「そーだね」と言ってから、戸棚に隠していた塩キャラメルを取り出した。眠い眠いと言うに違いないあいつをこれで釣りながら、私は今年も夏の終わりを駆け抜けるのだ。
天地始粛;てんちはじめてさむし
次第に暑さが静まってゆき、冷たい空気が秋を運んでくる季節
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