「七原がね、典子さんが歌詞の断片見ようとするの、喜んでたよ」
七原の真似をして始めたエレキギターをいじりながらそう言うと、彼女はふわりと笑んで「えぇ?」と、少し首を傾げた。
「喜んでたと言うか……見てくれる人がいると、、なんか、頑張らなきゃと思うみたいだよ」
音楽室での彼の言動を思い出しながら言葉を選ぶ。事実を曲げてしまわないように、同時に、典子さんが少しでも喜ぶように、国語の成績はあまりよろしくない頭を捻った。
そんな私の苦労を知らない典子さんは、「そうかしら?秋也くん、あんまりそういうのに頓着しなさそうな気がするんだけど……」と言って、その黒目がちな瞳で真っ直ぐに私を見る。
正直、七原のことなんてそんなに見ていない私は、彼の性質について典子さんと議論するなんてとてもじゃないけどできそうになくて。「そう? まあでも、そんな感じのこと言ってたよ」と性急にこの話題を終わらせた。
そして、難しいコードの練習に熱中するフリをする。私たちの間に沈黙が満ちて、そこにエレキギターの間の抜けた音だけがしゃかしゃかと響いた。
私の左手を見詰める彼女の瞳は、どんなに彼を真似ても、私を見てはくれない。私は溜息を飲み込んで、代わりにコードに合わせて七原のノートにあった歌詞の一部をそらんじた。
鶺鴒鳴;せきれいなく
恋教え鳥とも呼ばれるセキレイが鳴きはじめる季節
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