中間テストの結果がすこぶる悪く教師から大量の課題を出されたらしい千鶴が、「要っち〜助けてよ〜」なんて言いながら要に泣きつく。
しかし要は「さぼったお前が悪いんだよ」と言って、それを華麗に一蹴した。要は読んでいる本から視線すら上げない。
千鶴は要のそんな態度にめげることなく、再度「まじで! お願いします眼鏡さま!」と、頼む気があるのかないのかイマイチわからない言葉を眼鏡さまに投げかけた。

「今日も平和だねー」

ふたりのぶれなさに感心しながらそう呟くと、アニメ雑誌をめくっていた祐希がぽつりと「なんかあれ思い出す……アリとキリギリス」と言って、覇気のない瞳で二人を見遣った。
ふたりを脳内でアリとキリギリスに変換してみる。平和さとばかっぽさが三割増しになった。私はそれにくすくす笑いながら、「あー確かに」と相槌を打つ。

「結局キリギリス助けるあたり、要らしくもあるしね」
「え?あれ最後キリギリス死ななかったっけ?」
「そうでしたっけ?」
「どうでしたっけ?」

小首を傾げあった私と祐希は、示し合わせたように立ち上がる。そして、「ねえねえ眼鏡さまー」「ちょっと教えて欲しいんだけどー」と、千鶴の相手で辟易している彼に向かって嬉々として声をかけた。


蟋蟀在戸;きりぎりすとにあり
キリギリスが戸口の近くで鳴きはじめる季節




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