Z市の無人地帯を吹き抜けてゆく北風。風の向きも、強さも、いま私の住んでいる駅前と何一つ変わらないのに、人の気配がないというだけで風の音が嫌に大きく聞こえる。
私は竹ボウキを動かす手を止めて、林立する無人ビルの間をひゅうひゅうと駆けてゆく風の音に耳を傾けた。ほとんど裸になってしまった街路樹が、さわさわと泣いている。せっかく集めた枯葉は、はらはらと四散してゆく。Z市の旧市街は、まさに「さびしい」を絵に描いたような所だ。

「ナマエさん、手が止まってますが」
「あ、ごめん」

ジェノスくんに指摘されて、私は思い出したようにホウキを動かす。
旧市街には民間はおろか、行政のサービスも行き届かない。当然、清掃員など来るはずもなく、街路は木の葉で埋まる。サイタマはそんな細かいことは気にしていない気もするけれど、ジェノスくんは部屋の掃除と同じ様に、この道の木の葉を除去することも弟子である己の仕事と認識しているらしかった。

竹ボウキの穂先が、舗装された歩道とこすれ合う音がリズムよく響く。私の音、ジェノスくんの音、私の音、ジェノスくんの音。交互に聞こえるそれは、無人の街角に途切れることなく続いてゆく。私はそれがなんだか無性におかしくて、思わずふふっと笑ってしまった。
ここは、さびしい街だ。けれど、だからこそ、私の背後にいる彼の気配を色濃く感じることができるのだ。


朔風払葉;きたかぜこのはをはらう
北から吹く冷たい風が、木々の木の葉を落とす季節




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