「あれ? 名前ってこのマンガ持ってたっけ?」
テスト勉強をする、という名目でうちにやってきた隆ちゃんは、以前はうちになかったマンガの単行本を目敏く見付けてそう尋ねてきた。
「ああ、それ、浅羽先輩に借りた」
「え!? あ、浅羽先輩に!?」
彼にしては大きな声が出たなあ、と感心しながら、私は「うん」と事もなげに頷いて、数学の問題を解き続ける。
一方、隆ちゃんはというと、私が浅羽先輩から借りたマンガの方をちらちらと気にしていて、一向に筆が進んでいない。
「……休憩する?」
見かねた私がそう尋ねると、隆ちゃんは隠しきれない期待に目を輝かせて頷いた。
「お茶入れてくるから、それ読んでてもいいよ」
「ほんとう? ごめん! ありがとう!」
苦笑混じりに「いいよ」と返すと、彼はさっとマンガを手に取って、大切なものを扱うように慎重に、表紙を開いた。感嘆のため息をついた彼に、思わず苦笑が漏れる。
「返すの再来週の約束だから、なんならまた読みにきてもいーよ」
「ほんと!?」
マンガからばっと顔を上げた彼に、私は大きく一度頷いた。街にはイルミネーションや素敵なイベントがあふれているけれど、一緒にマンガを読むだけの冬も、たぶんきっと悪くない。
熊蟄穴;くまあなにこもる
熊が冬眠のために、巣穴に隠れる季節
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