「え、それが、、せり?」
「残念。ほとけのざでした」

私が「芹はこっち」と続けて、ほとけのざとよく似た形状の葉をまな板に乗せると、冴ちゃんは観念したように首をすくめて「うーん、全然わかんないや」と言い、きりっと整えた眉を少しだけ下げて笑った。

「ねー七草粥っておいしいわけ?」
「うーん、、、まあ、おかゆだからねえ、なんとも。でも、忘年会や新年会で疲れたお腹には、とってもやさしいよ」

昨日、嶋田マートで芹の葉が売られているのを見付けた時、真っ先に頭に浮かんだのは冴ちゃんのことだった。
明るくて、ノリが良くて、若い女の子が嫌厭するようなお酒も大好きな彼女。きっと年末から年始にかけて、あっちこっちの飲み会に引っ張りだこだったはずだ。
お酒があまり好きではない私も、冴ちゃんと飲むお酒はとても美味しく感じてしまう。きっと、みんなもそうなのだと思う。太陽のような彼女の笑顔は、なによりもうまい酒の肴なのだ。

「そうなの? それはぜひ作って欲しいわー」
「うん。ちょっと待っててね」

私の大好きなこの笑顔が、今年もたくさん見られますように。冴ちゃんが今年も元気でいられますように。
そんなことを心の奥で神様にお願いしながら、私はそっと包丁を握った。


芹乃栄;せりすなわちさかう
寒の入りをむかえ、春の七草である芹が盛んに生える季節




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