びゅうびゅうと容赦なく吹きつける風雪に耐えかねたらしい下っ端たちは、マーズ様が視察にいらしたアカギ様の元へ行っているのをいいことに、作業を中断して暖を得ようとひとところに集まってゆく。
僅かな体温を奪われないように、なにやら言葉を交わしながらぎゅっと固まる彼らを、私は設置された機械の上からひとり、見下ろしていた。

雪に埋もれた景色の中で、揃いの浅黄色の頭がぎゅっと集まっている様子は、寒さに耐えて顔を出すフキノトウのように見えなくもない。

幼い頃、兄弟たちと冬の里山を歩いていた頃の記憶が、頭の隅で蘇る。
私は、フキノトウが好きだった。真っ白い雪の下からのぞくみずみずしい緑は、春がもうすぐそこまで来ている合図だ。春が来れば、出稼ぎに行っていた父や上の兄たちが帰ってくる。静かで厳しい山里の冬が終わって、新しい一年がようやく動き始める――。

私はそんな過去の幻影を記憶の片隅に描きながら、マーズ様から渡されていたトランシーバーのスイッチを押す。スピーカーから聞こえてきたノイズ混じりのマーズ様の声は、アカギ様との時間を邪魔された苛立ちを隠さない非常に刺々しいものだったが、私はそれを全く気にすることなく「第二班と第三班が作業を放棄しています」と、己に与えられた任務を全うした。
小さくない舌打ちをしたマーズ様は、「すぐに行く」と言ってトランシーバーを切った。その鋭い眼差しに烈火のごとき怒りをたたえたマーズ様が現れるのは、きっともうすぐだ。

そうすれば、フキノトウのように身を寄せ合う彼らは、蜘蛛の子を散らす勢いで散ってゆくに違いない。
そして私は、そうして再び雪の奥深くに埋もれてゆく春の兆しを、黙って見下ろしているんだろう。


款冬華;ふきのはなさく
大寒をむかえ、寒さの厳しい中、ふきの花が咲く季節




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