「オムライス、卵焼き、スコッチエッグ、巣ごもり卵、トルティージャに、かに玉とか?」

私が並べ立てた卵料理の数々に、サイタマは「よくそんなに知ってんな」と感心したような声をあげてから、改めて自身の持っているビニール袋に視線を落とした。
贔屓のスーパーのタイムセール、おひとり様おひとつ限りで安売りされていたとれたて新鮮卵が、私とサイタマの二人分、割れないように優しくそこに入れられている。

サイタマが荷物を持ってくれているので、私の両手は軽い。もこもこのダウンジャケットを着こんだサイタマの隣を、私はスキップに近い足取りで歩いてゆく。

「料理だけが私の取り柄だからね」

男を掴むには胃袋から。母さんに教えられた我が家の家訓と、料理の手腕。
昔は、これって本当に役に立つのだろうか、と疑問に思っていた。
けれど今はそのおかげで、ほんの少しだけど、私はサイタマの役に立てている。母さんには感謝してもしきれない。

「今夜のおかずはなににしようかなー」

冷蔵庫の中におさめている冬野菜たちと、さっきサイタマと買った卵。いくつもある素材と味の組み合わせを頭の中でシミュレーションしていると、ビニール袋を揺らして隣を歩いているサイタマが、そのゆで卵のように綺麗な頭をちょいちょいとかいて、こう言った。

「ま、期待してるわ」
「うん、任して」


鶏始乳;にわとりはじめてとやにつく
春の気配を感じた鶏が、鳥屋に入って卵を産み始める季節




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