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名前から送られてきたメールには、ごくありふれた新年のあいさつと、誕生日を祝う文言に加えて、ごく控えめに、「今年も、旭くんと仲良くできたら嬉しいです」という言葉が添えられていた。彼女と仲良くするか否かなんて、尋ねられるまでもなく答えはイエスだ。
彼女が、今年も自分と仲良くしようと思ってくれている。それに歓喜した東峰は、そのことを彼女に伝えるべく、すぐさま返事をしようとしたのだが。

携帯電話を握りしめたまま、東峰は途方に暮れていた。

名前への返事をしたためようと、返信画面を呼び出したところまでは、よかった。
しかし、いざ文字を打ち込んで、それを読み返してみると、小さな画面に表示された文字列は、なんだかしっくりこなかったのだ。ついさっき、澤村に対してうまく言葉を選べなかった時とは少し違う感情が、胸の中で渦巻いている。伝えたいことはこんなにもはっきりしているのに、それを言い表すうまい言葉が、どうしても見つからない。

書いては消し、書いては消しを繰り返すうちに、刻々と時間だけが過ぎてゆく。
ついさっき、彼女からメールが来れば、今年はいい一年になるに違いないと思っていた東峰は、あっという間にそのことを忘れてしまっていた。今年最初の煩悩が、自分でも気付かないうちに、彼の中で大きくなってゆく。

名前がメールをくれたことがどんなに嬉しかったかを、彼女に伝えたい。
それができたなら、きっと今年は自分に少し自信が持てるようになる気がする。

小さく深呼吸をした東峰は、居間のこたつをそっと抜け出ると、気持ちを落ち着けるようにゆっくりと呼吸をしながら、自室へと向かう。
携帯電話の画面には、090からはじまる彼女の電話番号がひっそりと表示されていた。




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