(08:57)

9時に駅前に集合という澤村からのメールを受けて、東峰は集合時間の三分前に駅前に到着した。時間に余裕を持って行動する澤村と菅原は既に駅前にいたようで、まばらな人の向こうに談笑する二人の姿が見えた。
足のピッチをあげて二人の方に歩いてゆく東峰にまず気付いたのは、菅原だった。

「旭ーあけおめー!」

寒い中さわやかな笑みを浮かべて、大きく手を振った菅原。彼に手を挙げて応えた東峰は、「おー、おめでとう」と言いながら、二人に合流する。

「今年も……いや、今年は、よろしくな」

意味深な瞳でわざわざそう言い直した澤村に、東峰は思わずじとりとした視線を向ける。そんな二人を見て苦笑を浮かべた菅原は、「それじゃ旭が萎縮しちゃうだろー」と軽く澤村をたしなめてから、改めて東峰に向き直る。

「今年も、頼むよ、エース!」

思わずつられて笑顔になってしまう、菅原独特の笑み。東峰はそれに「おう」と頷いて、自信たっぷりに笑った。エースと呼ばれる限り、自分は胸を張って任せろと言わなければならない。去年は、みんなにそのことを教えてもらった。

「スガも、大地も、よろしく」

自身のペースを崩すことなく、ゆったりとした調子でそう返した東峰。菅原はもちろん、澤村も、そんな東峰に屈託のない笑みを返した。

「いやー、マジで成長したな、お前」
「だからその親戚目線やめろよ……」

インハイ予選以降何度か繰り返されたそんなやりとりを飽きずにする澤村と東峰の肩を、菅原はぱしんと軽く叩いた。そして、「漫才もいいけど、そろそろ電車の時間だよ」と言い放って、にやりと笑う。どこか人を食ったような笑みを浮かべる菅原に反論するように口を開いた二人は、図らずも声を合わせてこう言った。

「漫才じゃねえよ」
「漫才じゃないよ……」

元旦らしく人の少ない駅前に、堪え切れず吹き出してしまった菅原の笑い声が響いた。



おまけ

東「あれ、そういえば清水は?」
澤「ふられた」
東「お、おう……ドンマイ……」
菅「旭に気い使われちゃったな、大地」
澤「へなちょこのくせに気とか使ってんじゃないよ」
東「え……なんで俺怒られてんの」

(清水さんは親戚の集まりがあるため不参加だそうです)




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