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彼女は朝からソワソワしていた。何故なら、今日は彼女の誕生日だからだ。それでも彼女はプレゼントを待っている訳では無かった。大好きな彼から、どのようなお祝いのコメントを貰えるのかが楽しみで仕方なかったのだ。
「#name#ちゃん、おめでとう!」
「拓麻!ありがとう」
大好きな彼の大切な友人である一条拓麻から綺麗にラッピングされた大きめの箱を渡されると、彼女はにっこりと笑ってそれを受け取った。
「開けていい?」
「どうぞ」
開けていいかの許可を得ると、彼女はラッピングのリボンをするりと解き、箱の蓋を開けた。その中に入っている物を見ると、彼女は目を丸くした。
「何で、薔薇…?」
「ふふ、秘密。」
彼女が疑問の声を上げると、彼はそれだけ言い手を振って彼女の前から立ち去った。彼から受け取った箱の中に入っていたのは、11本の薔薇だった。全く意味の分からないそれに、彼女は首を傾げた。
−−−おかしい。
彼女は、そんな事を考えていた。もう少しで自分の誕生日は終わってしまうというのに、大好きな彼である玖蘭枢からは未だ何の言葉も貰っていない。ただ単に顔を合わせていない訳では無い。
顔を合わせるどころか、会話もした。でもその会話の内容はいつもと何ら変わらなかった。自分から誕生日だと言ってしまおうかとも考えたが、それは彼女のプライドが許してはくれなかった。
「はぁ……」
「どうしたの?」
彼女は溜息を漏らした。その溜息を聞いて、いつの間に彼女の部屋に入って来て居たらしい枢が心配そうな顔をして彼女の顔を覗き込んだ。
「っ!枢…!」
自分を落ち込ませていた主の突然の登場と、枢の顔の近さに驚いて彼女は身体を退け反らせた。そんな彼女の背中に、そっと枢が腕を回した。
「大丈夫…?」
「……大丈夫…」
尚も心配そうな顔をする枢に、小さい声でそう返事をした。その言葉を聞き取った枢が、安心した顔でよかった、と笑った。
「……あぁ、そういえば」
「……?」
ふと、何かを思い出したような声を上げた。彼女はそんな枢の言葉を聞き少しだけ、期待した。もしかしたら誕生日の事を言ってくれるのでは無いか。しかしそれは、枢の口から出た次の言葉で脆くも崩れ去った。
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