衝撃というものはいつも唐突にやってくる。初めて蜘蛛に噛まれた時。トニー・スタークと出会ったとき。好きだった子の父親が自分の敵であると知ったとき。
そして。
「え、メイおばさん、今なんて?」
「だからここに、新しく一緒に住む人が来るのよピーター」
「いやいや、待って、え!こ、ここに!?」
叔母がこの家に同居人が来ると言い出したとき。
嘘でしょ!?と言ってピーターは頭を抱えた。そんなピーターに叔母であるメイはくすくすと笑うと「そうよ、ここによ」とサラリと言ってのけたのだ。
お世辞にも広いとは言えないこのアパート。ピーターとメイと二人でいっぱいだと思っていたが。たしかに思い返すとここ最近、物置として使っていた部屋をメイが綺麗にしているのを見ていた。ピーター自身も掃除は手伝っていたのだが、模様替えかなんかだろう、と思い込んでいた。
それがまさかここに住人が一人増えるなんて。
「ここから勤務先に通うらしいし、あなたが会うのは朝と夜くらいじゃないかしら?
「えっ、勤務って、もしかして年上なの…?」
「そうよ?」
「うそっ、もう信じられない!なんでそんな話しを受け入れたの!?僕に相談もしないで!」
「相談も何も、スタークさんからのお願いだったから断れないじゃない?ピーターもお世話になってるんだし」
「スタークさん!?」
ありえないの連続だ。連続すぎる。今日何度驚けばいいのだろうか。
「つまりスタークさんの口利きでここの住人が一人増える話しをメイおばさんは了承して、僕にいま伝えたって事…?」
「その通り」
「ありえない!ありえないよメイおばさん!僕、ど、同居なんて無理だし、知らない人なんてもっと困るよ!」
「はいはい、分かったからそろそろ学校行きなさい」
「あー!全然分かってない!僕は反対だからね!スタークさんに連絡して撤回してもらう!」
どすどすと分かりやすい音を立てて歩くと、ピーターは少し乱暴にバックパックを背負い玄関の扉を開くと、出ていってしまった。
「あの子ってば、…まだどんな人かも話してないのに…まあ何とかなるかしらね」
そう呟くとメイはグラスに入っていたオレンジジュースを飲み干した。
(これは初めて出会う朝のこと)