汚れのない漆黒の瞳が、まるでこちらを射抜くように見つめてくる。その視線についにトランクスは耐えられなくなった。
「あ、あの、オレの顔になにか付いてますか?」
思わず顔に手をやれば視線の主は口元を少し緩めて笑った。揶揄われているのか、と眉を寄せたトランクスの頬に自分よりもしっかりとした手が寄せられる。鍛錬を怠らないその人の手は戦うだけではなく、こうして安らぎや温もりも与えてくれて、幼い頃からその手に触れられるのが好きだった。
「いや。小さい頃はお兄ちゃんお兄ちゃんと俺に引っ付いていたのを思い出したんだ」
「なっ! や、やめてくださいよ。もう昔のことですから」
兄という存在が欲しかった幼少期。幼馴染で親友の悟天には二人の兄がいて、その一人である彼をトランクスは「お兄ちゃん」と呼び慕っていた。だがそんな思い出も大人になった今では恥ずかしいものでしかない。無邪気に慕うことができたあの頃と違って、トランクスの心境には大きな変化があったからだ。あの頃抱いていた憧れが別の想いに変わった瞬間から、彼を前にすると緊張して、どうしていいのか解らなくて、めちゃくちゃにしてしまいたくなった。
頬に触れている手を握りしめ、押し倒したままだった彼の顔の横に押し付けた。
「それに、今のオレにとっての貴方は、もう兄のような存在ではないんですよ?」
子供のように拗ねてみせると、まるでそんなことは解っているとでも言うように彼が瞼を閉じてしまい、トランクスはごくりと唾を飲み込んだ。