スクール帰りにカプセルコーポレーションへと向かうと、用事もそこそこにブルマさんの研究の手伝いに駆り出された。こういうことはよくあることなのでとくに驚いたりはしない。こちらも仕事の関係でブルマさんにはいろいろと頼み事をするのが多いため、手伝うことは当然の労働と言えよう。ついでに科学についての勉強にもなるため断る理由は一つもないのだ。
いったい何を作っているのか詳細が解らないままブルマさんの指示に従うこと数時間。研究室のドアが開き、顔を覗かせたのはトランクスだった。
「ねぇママ! お兄ちゃん来てるってほんと!?」
「えぇ。ほら、そこにいるわよ」
俺がいることに気付くと嬉しそうに駆け寄ってくる姿はまるで弟の悟天のようで微笑ましい。お兄ちゃんと呼ばれるようになってからは本当に弟が一人増えたような感覚がして不思議だった。たぶん、嬉しいのだと思う。
「なーなーお兄ちゃん、ちょっと屈んでよ」
「どうした?」
服の裾を遠慮がちに掴んでくるトランクスの目線に合わせるようにして屈むと、小さな両手に襟元をぎゅっと握られそのまま強く前方へと引かれた。あっと声を上げる暇もなく、俺の口はトランクスによって塞がれてしまった。所謂キスというやつだ。ふと、小さい頃にそれは好きな人とするものだとクリリンさんから聞いたという悟飯がキスをねだってきたことを思い出した。
「へへーん。お兄ちゃんのくちびる奪っちゃったー」
さっと唇を離したトランクスは頬を染めて、いたずらっ子のような笑みを浮かべると走って研究室を出て行ってしまった。弟というのは兄とキスをしたくなるものなんだろうか。好かれるのはいいがなにか間違っているようにも思う。もし悟天も同じような行動をするなら今度は誰かに相談でもしてみよう。
「さすがわたしの子だわ。積極的ねー」
感情面が強いブルマさんの言葉は俺にとっては理解が難しいものだから、おそらく相談はできないだろう。こういう時はやはりクリリンさんが適任だろうか。
そういえばここへ来た本来の要件を済ませていなかった。夕飯までには帰らないと母が心配するし、そろそろ本題に入ってもいい頃合いのはずだ。
「ブルマさん、お願いしていた宇宙船の件ですが……あの、ブルマさん?」
「あんたも、さすが孫くんの子よ」
なぜか呆れた視線を向けられてしまった。