ステップアップ


 カプセルコーポレーションの最上階にあるオフィスで、トランクスは一人の男を壁に押し付け無防備な唇を自分のもので塞いでいた。彼は親友の兄であり、子供の頃からの想い人でもある。何度も何度もアプローチをかけ、数年前にようやく恋人という関係へと辿り着くことができた。恋愛というものが解らない、と言う相手のためにトランクスは時間をかけて一つ一つのステップを進んでいこうとしていた。だがその心意気も今まさに脆く崩れ去ろうとしている。
 自分よりも身長の高い相手の唇を食むように幾度も軽いキスを繰り返すトランクスを、拒むことなく受け入れている男が不思議そうに口を開いたのはそれから数分後のことだ。

「仕事の話をするんじゃなかったのか?」
「っす、すみません。久々に会えたものですから」

 ケロっとした表情を前に急に恥ずかしさが押し寄せてきたトランクスは急いで身を引いた。恋人関係になれた二人だったがこの日顔を合わせたのは実に半年振りである。宇宙船に乗り様々な惑星を相手にビジネスを展開している彼は、一度宇宙へ出れば数ヶ月は地球へ戻ってこない。その中でも今回は、遠くの星へ行っていたようでいつもより長い時間二人は離れ離れであった。
 彼がここへ訪れのはそのビジネスにカプセルコーポレーションが一役買っているからだ。最初はトランクスもビジネスパートナーとして出迎えようとしたのだが、いざオフィスで二人きりになった途端に我慢ができなくなってしまったのである。唇に残る温もりが名残惜しく、トランクスは目の前の恋人を見上げた。

「あの……もう一度しても、いいでしょうか」

 どうやら今日は仕事の話はできそうもないようだ。