異なる歴史


 気がつけば目で追ってしまっている彼の姿。孫悟空さんによく似た小さな子供。その人を初めて知ったのは過去へ来てからだった。人造人間、そしてセルとの戦いはオレが過去へ介入したことで起こってしまった歴史の改変。しかし彼の存在だけは初めからオレの知っている歴史とは違った。未来では悟空さんの息子は悟飯さん一人だけで、彼の存在はどこにもない。
 でも、それを伝えた時、彼は戸惑うことも悲しくなることもなかった。

「トランクスさんのいた世界では、俺が必要ないくらい悟飯は強いんですね」

 まるで悟飯さんのためだけに自分は存在しているんだと、そう言っているような気がして胸が苦しくなる。彼らは双子でお互いをとても大事にしている。オレが彼と出会ってから共に過ごした時間は悟飯さんに遠く及ばない。敵わないことは解りきっていることだ。それでも、彼の意識を独り占めできる悟飯さんを羨ましく思ってしまう。

「セルとの戦いで俺は悟飯より弱いと知りました。だからこの世界の未来でも俺は必要なくなると思います」
「そんなこと、ありませんよ。悟飯さんは貴方を守るために強くなった」
「俺は悟飯を守るために生きてきました。守られてしまっては必要ないのと同じです」

 悟空さんや悟飯さんに似ているけれど雰囲気は全然違う彼は感情をうまく表に出せない。だから、自分がいらなくなる存在だなんて悲しいことを事も無げにしか言うことができない。悟飯さんを思う気持ちを健気と言えば聞こえはいいが、それを悟飯さん以外に向けることができないのはとても辛いことだ。彼にとっても、オレにとっても。
 どうしてこんなにも彼を気にしているのか自分でも解らなかった。抱き寄せた小さな体は、冷たく感じる声音からは想像できないくらいに暖かい。初めて出会った時から気づけば目で追っていた。その理由は、この温もりを手放したくないというのが答えだろうか。

「もし……もし悟飯さんには必要なかったとしても、オレにはあるんです。オレには、貴方が必要ですよ」
「トランクスさんには俺が必要?」
「はい。だから、悲しくなることを言わないでください」
「……はい」

 もうすぐ未来に帰らなければならない。未来に、オレの世界に貴方がいないことがひどく寂しい。過去と未来。本来ならば交わってはいけない時間の流れ。もう二度と会うことはないかもしれないからだろうか。もし許されるならこのまま貴方を連れて行ってしまいたい、なんておかしな考えをしてしまったのは。





リクエスト内容:未来トランクスの世界に何故か兄主が生まれてなかった世界線で、過去に来て兄主に一目惚れする未来トランクス
リクエストありがとうございました。