授業が終わり今日もグレートサイヤマンになって街の平和を守るぞ、と気合を入れた悟飯は学校の屋上で誰もいないことを確認するため周りを見渡した。すると学校の裏手から慣れた気を僅かに感じて下を覗き込む。そこには双子の兄と見知らぬ女の子が対面するように立っていた。
「兄さん、どうかしたのかな」
「見たらわかるじゃない。告白よ、あれ」
「へぇー……えっ! こ、告白で、え、ビーデルさん!?」
予想もしていなかった返答内容に驚いて声を上げた悟飯は隣を見てさらに驚いた。先ほどの自分と同じように下を覗き込んでいるのはビーデルだ。いつの間にいたんだろうと思いつつ、もう一度兄たちのほうへと視線を移す。頬をりんごのように真っ赤に染める女の子は今にも泣きそうな表情で、そんな彼女に兄は少しだけ困っているようだった。一見いつもと変わらない表情だが双子として生まれた時からずっと一緒にいる悟飯の目は、兄の僅かな変化も見逃さない。
「ボク、行ってきます」
「落ち着きなさいよ。あなたが行ってどうするの」
「ですが、困っている兄さんを放ってはおけませんよ!」
「あ! 待ちなさい悟飯くん!」
手摺りを乗り越えようと足をかけたところでビーデルが止めに入った。放課後とはいえまだ学校には多くの生徒が残っている今、屋上から飛び降りるなんて騒ぎにならないはずがないのだ。しかし悟飯にはそんなことを考える余裕なんてない。自慢の兄が人から好かれるのは喜ばしいことだが困っているのなら話は別だし、やはり恋愛はまだ早いのではないかと思う。女の子には残念だけど諦めてもらおうと、さらに身を乗り出すが腰に回ったビーデルの腕に阻まれてしまった。
「離してくださいビーデルさん!」
「ダメよ! いくら兄弟だからってね、人の恋愛事には口を出さないものよ!」
「ボクと兄さんの間では許されます!」
「あなたね、ブラコンにも程があるんじゃない!」
そんな屋上で繰り広げられる攻防戦を下から見上げている兄はただただ首を傾げるだけであった。