グレートサイヤマン3号


 なんの変哲もない、穏やかな昼下がりのことだった。

「お困りのそこのあなたにこちらの素敵なプレゼントを差し上げましょう!」

 休日だからと言って惰眠を貪るような兄ではないことを知っている悟飯は、とある荷物を腕に抱きしめながら意気揚々と兄の部屋を訪れた。今日の悟飯はいつもと違う。それは声音や口調だけではなく外見からして普段とは違っているのだ。部屋で読書を嗜んでいた兄はそんな弟の様子に驚くことはなく淡々とした目線を向けた。

「とくに困ってはいないが。突然どうした、悟飯」
「ボ、いえ、私は悟飯ではない! 正義の味方グレートサイヤマンだ!」

 そう。彼は今、街の平和を守る正義のヒーローとしてやってきたのだった。ご自慢のポーズを決めて名乗るものの兄からの反応はとくにない。二人の間に沈黙が続き、気を取り直すために咳払いを一つした悟飯は大事に持っていた荷物を兄へと差し出した。それは彼が着用しているグレートサイヤマンと同じデザインで色違いの衣装であった。ご丁寧にヘルメットまで用意されている。

「どうぞ! ブルマさんに作ってもらいました!」
「いや、俺は別に」
「これであなたはグレートサイヤマン3号になれますよ! さぁ、着てみてください!」

 兄として弟の正義活動は誇りに思えど、そのスタイルに関しては理解が及ばなかった。だからと言ってバイザー越しに輝く期待に満ちた瞳を拒めるかと言えば答えはNOである。仕方なく衣装を受け取り着替えることにした。
 初めて変身してから今日まで、ずっと兄にこのかっこよくて素晴らしい格好をしてほしいと願ってきた悟飯はドキドキが止まらなかった。ついに兄もグレートサイヤマンになるんだと思うと興奮しないわけがなく、つい着替えている姿をじっくり見てしまうのも仕方のないこと。生まれた時から一緒だったからお互いの裸なんて見慣れている。しかしどうだろう。黒のアンダーウェアの状態は裸の時よりもなぜか破廉恥に感じてしまう。体のラインがはっきりと分かるのに素肌が見えるわけではないというのが、却って想像力を働かせてしまっているのだろうか。鍛錬を怠らない筋肉は綺麗な曲線を描いており無意識のうちに触ってしまいたくなるほどだ。張った胸筋、無駄な脂肪のない腰のライン、引き締まった太もも、どこに視線を向けても毒だった。

「くっ……兄さんがエロすぎるっ!!」

 これ以上兄の姿を視界に入れていては正義のヒーローにあるまじき行動をしかねないと自制を働かせた悟飯は、妙な捨てゼリフを残して部屋から出て行ってしまった。対して残された兄は突然の出来事に疑問符を頭に浮かべつつ、中途半端に着替えたままではしょうがないとグレートサイヤマン3号(仮)の衣装を全て身につけて弟が戻って来るのを律儀にも待つのだった。