今から一年後に地球へ来るというサイヤ人との戦いに備え、父がピッコロと呼んでいた男は悟飯を鍛えるつもりのようだ。悟飯の安全を考えれば止めるべきだが、先ほどまでの戦いを思い返して改める。あのような戦いを目にしたのは初めてだったのに、肌ではしっかりと父たちの力を感じるとることができた。戦いの中で聞こえた”気”や”戦闘力”というやつがそれなのだろう。もし本当に、父の兄──ラディッツ以上の強さを持つサイヤ人が地球へ来るのだとしたら、今のままでは弟を守ることができない。おれが強くならなければいけない。
「お前も来い」
「おれは大丈夫です。方法を見つけたので」
悟飯を小脇に抱えたピッコロの申し出を断ったのは一つの策があったからだ。皆がすでに息絶えたと安心しているラディッツはまだ生きている。切れそうなほどか細い糸のような気をずっと感じていた。おれにもサイヤ人の血が流れているのなら、同じ種族から戦闘を学んだほうが効率がいいはず。危険はあるだろうが構わない。それで弟を守れるなら、手段を選んでいる場合じゃないんだ。
「きさま、なにを考えている」
「……悟飯をよろしくお願いします」
地に伏せている男に視線を向けていると威圧的な声をかけられた。きっとこの人はおれの考えを否定するだろうとなにも言わず頭だけ下げる。暫く沈黙が続いてピッコロは去っていった。その背中を見送るのもそこそこに今にも息絶えそうなサイヤ人へと近付いていく。そして服の下に隠していた首から下げたお守り袋から小粒の豆を一つ取り出した。
「お、おい。それ仙豆じゃないのか!? 冗談だろ。まさかこいつ生きてるっていうのか」
「平気です。全部は食べさせません」
「ど、どこが平気なのよ! せっかく孫くんが命をかけて倒したのに!」
父から貰った仙豆は一粒。おれや悟飯になにかあった時に食べるよう言われていたけど、考えついた策を行うためには今必要だ。クリリンさんたちの言い分は理解出来る。だけどこれは、一年後に弟を守るため。
「強くなるためです」
それがおれの生きる意味であり、目的だから。
慌てふためくクリリンさんたちを横目に父よりも大柄な体を仰向けにし、仙豆を少しだけ齧って欠片をラディッツの口の奥に押し込んだ。すると腹に空いた傷口が少しずつ塞がっていき、穴がなくなったところで止まった。まだひどい状態だが戦闘民族というだけあって意識は戻ったようで、痛みに顔を歪めながらもゆっくりと瞼が上がっていく。
「おれと取引しませんか」
驚いたように目を見開いた男は、次第にニヤリと笑みを作っていった。