利用価値


 弟カカロットとその仲間のナメック星人との戦いで重傷を負った体はまだ満足に動かすことができず、ラディッツは木の幹に背中を預けながら小さな子供を睨むように見つめた。その子供は弟の息子の一人で、負傷した大の男をひきずってこの森まで運んできたのだ。そして死の淵から魂を呼び戻した張本人でもある。

「おいガキ。なぜオレを生かした」

 焚き火の前で目を瞑りずっと黙り込んでいる子供に痺れを切らし声をかけると、ようやく子供の瞳がラディッツへと向けられた。
 死を目前としたあの時まるで蘇ったかのように意識が覚醒し、身体に空いた風穴は完全とは言えないまでも塞がっていた。誰の仕業かなんてものは目覚めた際に取引を持ちかけたこの子供に決まっているのだ。

「限られた時間で力をつけるにはあなたを相手にするのが一番最適だと思いました」
「オレを利用しようってことか」
「それ以外にあなたを助けた理由はありません」
「ガキのくせに生意気言いやがる」

 なるほど生かす変わりに鍛えてほしいということか、とラディッツは鼻で笑う。しかし子供の考えには共感できる部分もある。自分が強くなるために強い相手を求めるのは戦闘民族としての血だろう。一人一人の戦闘力が自分よりも劣るカカロットやナメック星人を選ばず、敵である自分を選んだ度胸は気に入った。
 ベジータとナッパの戦闘力は並のものじゃない。いくら鍛えたところであの二人に勝てる見込みなどあるわけないのだ。ふと、カカロットたちとの戦闘が始める前にこの子供を相手にしていたことを思い出す。確かに目を見張る数値を出していたが、戦いと呼ぶにはお粗末な動きだった。だがもし、自分たちサイヤ人のような戦闘員に育て上げることができたなら──。

「ま、オレもベジータたちの見下した態度には腹が立っていたからな。いいだろう。きさまに付き合ってやる」

 月の光に照らされた子供の瞳に反映する炎を見ながらラディッツはニヤリと笑みを浮かべたのだった。