気を失ったトランクスと悟天を抱えたピッコロはこちらへとやってくる男に目を向けた。その腕にはすでに息絶えた青年が一人抱えられている。二人が石化から解けたときにはすでに彼は魔人ブゥによって命を落としていたのだ。そして彼の双子の弟である悟飯もまた、ベジータの口から”死”を告げられた。だからこそ、青年を抱えた男──ラディッツが今どんな想いなのか、ピッコロには理解できた。
「ラディッツ」
「なんだ」
戦いに巻き込まれまいとその場から離れようとするラディッツを呼び止めたのは、敵から片時も視線を外さないままのベジータであった。 腕の中にいる青年の現状を知ったのも彼の口から告げられた時だ。悟飯と違い肉体がその場に残されていたことで現実であることを突きつけられてしまった。
「……悪かった」
ラディッツにはベジータを責める気なんて微塵もなかった。それよりも己の無力さに腹が立つくらいなのだ。だからこそ、プライドの高いベジータからの謝罪をあしらうように鼻で笑った。
「必ず仕留めろよ、ベジータ」
「当然だ」
その覚悟の決まった声音を聞いて背を向けた。サイヤ人として、この場に残り魔人ブゥを相手に戦いたいと本能が叫ぶ。だが一方で、自分が足手まといになる事実も理解している。なにより今は抱えた青年を安全な場所まで移すことが優先だった。
魂の抜けたその身体はいつもより重く、これが夢ではないのだと証明していた。