魔人ブゥとの戦いで一度命を落とした俺は今のままでは戦闘力が足りず、いずれ起こる可能性がある戦いに備えて修行を続けていた。だが、生まれつき感情に欠陥のある自分はどんなに努力したところで父や弟たちのように超サイヤ人にはなれない。潜在能力についてもナメック星の最長老には解放するのは難しいと言われた。ならどうするべきか。そう考え続け、辿り着いた答えはあの世で見聞きしたフュージョンと呼ばれるものだった。
「オレは絶対に嫌だぞ」
全身から拒絶のオーラを発したのはベジータさんだった。ポーズだけを教わるなら父だけでも問題はないが、実際にどれほど戦闘力が上がるのかはこの肌で感じてみたい。協力していただけないだろうかとお願いしたところ即答されてしまった。
「なんだよケチだなぁ。こいつがオラたちに頼み事するなんて滅多にねーんだからさ、聞いてやりてぇじゃねーか」
「知るか、そんなこと」
なんとしてでも見たいというわけではないが、やはり自分がフュージョンした時との比較対象としては知っておきたい。失敗なのか成功なのかの判断材料にもなる。まだ本人の了解は得ていないが、協力してくれれば自分と伯父のラディッツがフュージョンをして組手の相手になる。と提案をしてみればベジータさんは嫌々ながら、渋々と、了承してくれた。
実際にそのポーズを目の当たりにして、なぜそんなに嫌がるのかは理解できた。弟の悟飯なら恥ずかしがることなくやってのけるのだろう。気が膨れ上がり、そこに現れたのは父とベジータさんが合体した姿だった。ゴジータというらしい。肌に触れる空気が震えている。感じる戦闘力はただ二人の力が合わさっただけではないようだ。
「指先までしっかり伸ばせ」
「はい」
「よしいいぞ。それと──」
一度目にしたポーズを忘れたわけではないが細部まで正確にやらなければいけないらしい。確認しながら手の先まで力を入れると顎に指を添えられ、ぐっと視界が正面に戻されて驚いた。
「顔は真っ直ぐ前、こっちを向くんだ」
なぜならすぐ近くに相手の顔があったからだ。いつの間に、こんな至近距離にいたのだろうか。全く気付かなかった。父ならこの距離も慣れたものだが、今はベジータさんでもあるから少々気まずい。ニヤッと笑みを浮かべたゴジータは俺の頬に触れた後、ポーズのために伸ばしていた腕を撫でていき指を絡めるように手を握った。これも必要な行為、なのか。どうなのだろう。悩んでいると今度は腰を引かれより密着することになった。そもそもこんなに触れる必要はないはずなのだが。
「あの、」
「あんまり顔色一つ変えないのもつまらないな」
ポーズを教えてくれるのでは?という疑問はどこか不貞腐れているような表情を浮かべたゴジータの言葉に遮られた。なにを言っているのか理解できないでいると突然目の前からその姿が消え、身体が一瞬解放されたのち背後からまた自由を奪われてしまった。耳元で呼吸音が聞こえたと思ったら頬にゴジータの頬が触れ、道着の隙間からは手がするりと入っていき地肌を撫でていく。
「せっかくだ、フュージョン以上のことも教えてやるよ」
なるほど、合体すると性格や趣向も変わってしまうことがあるのか。そう分析し始めてしまったのは、俺の性質上仕方のないことだと思う。