美味しい食べ物を求めてまた地球へとやってきた破壊神たちは毎度のごとくブルマの家で寛いでいた。広いテラスに置かれたテーブルの上には様々な料理がずらりと並んでいる。同じテーブルには悟空も同席しており、新しい料理が運ばれてきてはすぐに空いた皿が積み上がっていくという見慣れた光景が出来上がっていた。
ビルスの腹が満たされてきた頃、テラスに孫家の双子がやってきた。ブルマの家にある重力室を借りて修行をしていたらしい二人は、少し離れた場所にあるテーブルに置かれた飲み物を片手に何やら話し込んでいる。その様子を興味なさげに眺めていると隣にいる付き人がどこか真剣味を帯びた声を漏らした。
「どうしたんだウイス」
「ちょーっと彼が気になるんですよねぇ」
中立の立場を貫く男が誰かに興味を持つなんて珍しいこともあるもんだ。そう思いウイスの視線を辿れば予想していた人物とは別の方へと注目しているではないか。ビルスの中では力の大会において別の男と合体して活躍したという記憶しかあまり残されていない。個人レベルでは興味をそそる存在ではなかった。
「あいつが? フュージョンしなければどうってことないやつだったろ」
「ええ。ですが力の大会のときにも思っていたんです。彼はまだ実力の半分ほどしか出し切れていないのではないかと」
その言葉に目を見開いた。悟空やベジータ程の実力がないにせよ、他の者に比べれば確かに高い戦闘力を持つ人間だというのはビルス自身認めている。しかし認識している戦闘力がまだ半分だというのが本当なら、本来の実力はゴッド化していない悟空をも上回るのではないだろうか。だがそれに神である自分が気付かないはずがない。ビルスは不機嫌なオーラを隠そうともせずに露わにした。
「どういうことだ?」
「戦闘中、ほんの僅かな時間ですが、彼の戦闘力が格段に上がっている瞬間がありました。しかも彼の気はまるでせせらぎのように静かで自然そのもの……ビルス様が気付かなかったのも無理はありませんねぇ」
「ボクをバカにしているのかッ!? 気付いていたに決まってるだろ!」
図星を突かれて居心地の悪くなったビルスは拗ねたように思いっきり顔を背けた。そこで二人の会話を聞きながら食事を続けていた悟空が手を止め、話題に上がっている息子のほうへと目を向ける。
「そういやオラが戦った未来のあいつはめちゃくちゃ強かったなぁ」
「そう、そこです。未来とはいえ彼であることには変わりありません。超ドラゴンボールによって人間らしい感情を与えられたことがきっかけで本来の力を出せたようですし、今の彼にだって同じように力が眠っているだけなのかもしれませんよ」
二人の会話に耳を傾けながらビルスは苛立ちを募らせていた。ウイスが気付いて自分が気付けなかったのが悔しいのだ。そうだ、自分が解らなかったのはあまりにも悟空の息子に興味を示さなかったせいだ。ウイスだって確信があって言っているわけではないことだし、ここは神である自分が確かめてやろうとイスから立ち上がった。
「おい悟空。お前の息子はどうすれば本気を出すんだ」
「うーん、オラにもよくわかんねー。あ、でも、悟飯がピンチになったときはいつもより強くなってたような……」
その曖昧な答えに、息子のことだろうがと呆れながらビルスは双子の方へと足を進めた。次のトレーニングがどうのこうのと話している二人は近寄ってくる神の存在には気がつかない。それも当然だ。神の気は神や天使にしか感じ取れないのだから。
「悟空の息子たち、暇つぶしにボクの相手をさせてやる」
声をかけられた二人は勢い良く振り返り、そこにいるのが見知った神であると解ると無意識に構えた体の力を抜いた。そして突然の神の申し出にお互い顔を見合わせる。破壊神であるビルスがどれ程の強さなのかは今更聞くまでもないほど身に染みている悟飯は困ったように眉を下げた。
「そんな、ボクたちではビルス様には敵いませんよ」
「力に大きな差があります。貴方の遊び相手にだってなりません」
「ごちゃごちゃうるさいなぁ。いいからかかってきなよ。ボクが満足できなかったら、そうだな……」
少し考える素振りを見せた後、ビルスはニヤリと笑みを浮かべた。
「二人のうち、どっちかを破壊しちゃうよ」