じめじめとした暑さに負けて冷凍庫から取り出した棒アイスを一口齧る。口の中に広がる冷たく甘い氷菓子を味わいながら悟天はリビングにいる兄を眺めていた。テレビのニュース番組を見ている兄はいつも通りなのだが、今日はイスにも座らず腕を組んで立ったままだ。別にそこはおかしくない。なにせ今の兄は座れない状況にあるのだから。なぜこんなことに?と思いながらキッチンで夕飯の支度をしている母に近寄った。
「兄ちゃんの背中になにかついてるよ」
「悟飯ちゃんだべ。それよりももうすぐ夕飯なんだから、あんましお菓子食べるんでねぇぞ」
「あ、うん」
まるでなんでもないかのような反応に呆気にとられてしまった悟天はもう一度リビングに顔を出す。そう、兄の背中にはぴったりと悟飯がくっついているのだ。しかもずっと無言で。いくら小さい頃から悟飯の兄好きを見ているとはいえ、明らかにこれはおかしな状況じゃないのか。頭を悩ませる光景を前に溶けかかったアイスを口に進めていると、大きな魚を肩に担いだ父が帰ってきた。
「ただいまー。おう悟飯来てたんか! チチー、頼まれてた魚獲ってきたぞ」
「え、それだけ!? 二人とももっとなにか言うことあるんじゃないの!?」
しっかりと息子たちの姿を視界に入れて、その状況も解っているはずなのに軽い調子で声をかけるだけの父に思わず声が出てしまった。なにが?という表情を向けてくる両親にこれ以上聞いてもしょうがないかな、と思い本人たちへ単刀直入に聞く事にした。
「ねぇ悟飯兄ちゃんどうしたの」
テレビに向けられていた兄の視線が、背後にいる悟飯へと移る。依然として無言のまま背中にくっついているが、よく見ればがっしりと兄の腰に腕が回されていて悟天は一歩引いてしまった。自身も兄へ抱きつくことはあるが、それはノリというか、お願い事をきいて欲しい時の手段のようなものだ。間違っても無言で長時間抱きついていたりはしない。
「いつも通りだと思うが、どこかおかしいか?」
「えー……」
だが平然と──いやそもそもこの兄が感情を乱すことはないのだが──事もなにげに言うものだから、悟天はもしかしたら自分の感覚のほうがおかしいのではないかと疑い始める前に、兄たちを気にすることをやめたのだった。