タイムマシンの誤作動で再び過去へと来てしまったオレは母さんから留守番を頼まれてしまった。どうやらカプセルコーポレーションにあの人がドラゴンレーダーを借りにくるらしい。珍しいですねと理由を尋ねても母さんはニヤニヤと笑うばかりで答えは教えてくれなかった。神龍に頼らなければならないことが起きてしまったのだろうか。そう心配していると来客を知らせるチャイムが聞こえた。きっとあの人だ。
「お久しぶりです、トランクスさん」
こんな綺麗な人、知り合いにいただろうか。訪ねてきたのは見ず知らずの女性であった。すらりとした体躯はチャイナ服を見事に着こなし、流れる黒髪は艶を帯びている。しかし一目で鍛えられていると解る体つきをしている。目元は人造人間の女を思い起こすが冷徹な印象は抱かない。そもそも過去の時代でオレを知っている人は限られている。つまり新たな敵という可能性も考えられる。
オレの警戒心に気付いた女性は一度自身の体を見下ろし、納得したように「そうでした」と呟いた。
「周りが馴染んできていたので忘れていました」
そこでふと感じた慣れ親しんだ気配。待てよ、この雰囲気どこかで。よくよく女性を見てみるとその表情は驚くほど表情筋が働いていない。似ているあの人に。
「もしかして貴方、はっ!?」
その時、タイミング悪く一歩踏み出した足元を掃除ロボットが通過する。おかげで足を踏み外したオレの体は傾き、咄嗟に手を前に出して床との衝撃を避けようとした。しかしオレの手が触れたのは硬い床ではなく柔らかい感触。驚いた拍子にバランスを崩し、そのまま体重をかけてしまい柔らかい感触とともに床へ倒れこむ。衝撃は少ない。何かが自分と床の間に入っている。
「大丈夫ですか。すみません、この体にまだ慣れていなくて支えきれませんでした」
「いえ、オレの方こそすみませ、ンンっ!」
目を開けるとなんてことだ、オレは女性を押し倒していた。それもただの女性ではない。憧れ、尊敬し、オレの心を支えてくれるあの人なのだ。どうりで美しいわけだ。じゃあ先ほど触れた柔らかい感触は、と自分の手元を見ると仰向けになってもなお服を押し上げる豊満な胸を掴んでいた。本物だ。本当に女性になっているんだ。初めての柔らかな感触にごくりと喉が鳴った。
「あらやだトランクスったら、こんなところで大胆ね〜」
「わぁああああ!! 違います、これは、事故です!!」
聞こえた母さんの声に我に返ったオレは慌てて立ち上がり振り向いた。そこには出かける前と同じようにニヤニヤとした表情を浮かべる母さんが物陰からこちらを覗いていた。自分の顔全体に熱が駆け巡り真っ赤になるのが解る。唯一の救いはあの人が全く動じていないということだろうか。