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 営業先である地球から離れた惑星に来ていた青年は慣れ親しんだ気が膨れ上がったのを体の芯で感じ取った。平和になったはずの地球で何かが起きている。それも戦いを嫌う弟がこんなにも気を昂らせてしまうほうどの脅威が。仕事はいくらでも替えが利く。そう思いすぐに交渉の場を離れ宇宙船へ飛んでいった。

「おい。急にどうしたんだ」

 一緒に仕事へ来ていた伯父のラディッツが訝しげな表情で横に並んだ。どうやら彼はこの大きな気を感じていないようだがそれも当然だろう。この惑星へは地球から何週間もかけて来た。それほどの距離がある。父である悟空ほどの実力者であれば感知することは可能だろうが、それはもう神の領域に近い。
 青年は生まれた時から双子の弟の気を感じとることができた。まるで自分の生命そのもののように。それは希薄な感情を補うかのような特別な力だが、残酷なまでに一方的な神の恵みであった。体の芯をジンジンと煽るようにかき立てる気は、もう自分の戦闘力を遥かに上回っている。二人の間にある差は目を背けてしまうほどに大きいと、その事実をただただ突き付けられてしまう無慈悲なもの。だからこそ、感情なんてものがないのかもしれない。
 宇宙船へ戻った青年はすぐに操作パネルで船の向かう座標を設定した。そして几帳面に首元まで締めていたネクタイを緩めながらラディッツを振り返る。

「悟飯に何かがあったようなので地球へ戻ります」

 それでも弟の為ならばそんな神の恵みも祝福として受け入れよう。感情の起伏が乏しい青年を突き動かすのは弟を守るという使命に似たなにかしかないのだから。