黒鉄の魚影01


 人間の嗅覚は犬などの動物よりもかなり劣っている。これは誰もが知っていることだろう。では検知能力はといえば人間もそれなりに優れているのだという。かつてまともに学校へ通っていた中学時代の頃に教師から聞いたことがあったのを今でも覚えているのは幼い頃から匂いに敏感だったからだ。目で見て覚えるよりも先に香りで花の名前を記憶したり、父親であった男から仄かに漂う誰のものとも知らぬ香水の匂いを嫌がって近寄りもしなかったり。他にもエピソードはあるだろうが残念ながらそれを思い出している余裕はなかった。
 子供というのは五感が鋭く、その多くは年齢を重ねるにつれて少しずつ劣化していく。名前は他の感覚器官に比べて嗅覚だけはあの頃のままだと実感することが多くあった。そのおかげか普通なら見落としてしまうような匂いを無意識に拾ってしまったのだ。すれ違った着物姿の老婦人から微かに感じた記憶に強く残る化粧品の香り。反射的に振り返れば気品のある雰囲気からは乖離した怪しい微笑みを向けられる。確かに目が合ったけれどお互いにそれ以上の接触はしなかった。

「どうかした?」
「いや……なんでもない」

 軽く会釈をしてから去っていく老婦人から視線を外した名前は不思議そうに声を掛けてきた哀を見下ろす。すると緊張感から遠ざかっていたガヤガヤとした周囲の音が戻ってくる。
 今日も米花百貨店は賑わっていた。とくに一階の中央ホールでは福引が開催されており集まっている多くの人の中には少年探偵団の姿もある。福引所に飾られたクジラのパネルと一等ホエールウォッチングの文字。本日の子供たちの目的はそれを射止めることだった。初めは皆で列へ並んでいたのだが、目敏くフサエブランドの限定商品の看板を見つけた哀とそれに付き添うという建前で名前も列から抜けたのだ。それが吉と出たか凶と出たかは捉えた人次第ということだろうか。
 ジュエリーショップの店員から受け取った販売整理券は運良く最後の一枚だった。つまり一方では運がなかった人間もいる。それが着物姿の老婦人であったのだが彼女はこの店で販売される数量限定の商品を目当てに遠方から来たようで、購入する手立てを失ってしまいひどく落ち込んていた。それに気付いた哀が自分の整理券を譲ったのだ。小さな女の子からの気遣いに驚きつつも微笑んだ老婦人が嬉しそうに整理券を受け取って、そうして和やかに終わればよかったのにと名前は少しばかり自分の鋭い嗅覚を恨んだ。
 老婦人が黒の組織のメンバーの一人であるベルモットの変装だと見抜いたのは名前のみ。彼女もそれに気付いていて、その上で二人はお互いに干渉はしなかった。今この場で正体を明かす必要はなかったからだ。

「よかったのか、譲っちまって」
「構わないわ。ちょっと残念だけど」

 平気そうな声音だが店頭の看板にちらりと視線を寄越す仕草に仕方ないなと苦笑を漏らす。

「俺が代わりのもの買ってやろうか?」
「そう? ならお言葉に甘えて。さ、貴方の気が変わらないうちに行きましょ」
「あんま高いもんは勘弁しろよ」

 もし無駄に警戒をしていたら、軽率にベルモットだと明かしていたら、穏やかに表情を和らげる少女の心は恐怖に染まっていただろう。だがそんなのことは望んでいない。哀にとっての平穏な日常を壊すのは本意ではないのだとジュエリーショップに向かう少女の背中を追いながら名前は改めて認識した。


 好んでつけてる香水、嗜む煙草、愛用しているシャンプー等、変装の達人と言えども身に染みついた匂いを変えるのは一筋縄ではいかない。名前は他人よりも優れた嗅覚でこれまで何度もベルモットの変装を見抜いてきた。けれど、組織を追うコナンやFBIの赤井たちにそれを告げたことはない。当人たちだけが認識し、目を逸らし、なかったことにしている。そこにはたった一つのとても簡単な理由があった。
 ”変装を見破っても誰にも明かさない。その代わり灰原哀には手を出さないこと”
 という単純な取引が二人の間には成されている。力関係を考えればベルモットの気まぐれで容易く反故になってもおかしくない一方的で脆いただの口約束だ。契約とも呼べないこの取引は絶妙なバランスで今も成り立っていた。


 子供たちを連れて阿笠邸に戻って来た名前が一人ソファで寛いでいると、背もたれに両腕を乗せながら園子が身を乗り出してくる。テレビとの間に綺麗に割り込まれたおかげで少しだけ気になったバラエティー番組のクイズの答えを見逃してしまう。

「見たわよー」
「俺はお前のせいで見えねぇんだけど」
「可愛げがないと思ってたけど、あの子もいいところあるじゃない」
「は?」

 人の話も聞かず一体何をそんなに感心するような顔をしているのかと眉を寄せるが、すぐに合点のいく出来事が起こったばかりなことを思い出す。米花百貨店には少年探偵団の他に同行者がいた。園子と蘭である。彼女たちは彼女たちでショッピングを楽しんでいたため別行動をしていたのだが、どうやら哀が老婦人に販売整理券を譲る場面をどこからか見ていたようだ。

「覗き見か。悪趣味だぞ」
「たまたまよ。ところでガキんちょたちはホエールウォッチングに行きたがってるとか」
「みたいだな。ま、福引は漏れなく全員外れだったから……お前、まさかあいつらを八丈島に連れてくとか言わねぇよな」
「さすが苗字さん察しが良くて話が早いわ!」

 その意気揚々とした態度に全くこのお嬢様は、と呆れながら膝に肘を乗せて頬杖をついた。遊園地や水族館へ行くのとはわけが違う。子供たちにとっては渡りに船だろうが、鈴木財閥のコネで贅沢な体験を出来る事が当たり前なのだと思われたら大変だ。とくに親御さんは苦労することだろう。金銭感覚は知らないうちに狂っていくものだ。

「甘やかしすぎなんじゃねーか」
「それ苗字さんにだけは言われたくないんですけど。おばあさんに親切にした後のことも私はばっちり見たわよ」
「……どこぞの家政婦かよ」

 諭すつもりが思わぬ反撃を受けてしまった名前は溜め息を一つ吐いて口を閉じた。自分でも言わんとしたことに説得力がないと気が付いたからだ。確かにあれは安い買い物ではなかったと数時間前のことをちらりと思い出しては頭を振るう。その様子をどこか面白そうに見ていた園子だったが友人の登場にニヤニヤした表情はすぐに焦ったものへと忙しなく変わった。

「つまり園子なりの哀ちゃんへのご褒美と名前さんへの労いの気持ちってことよね」
「ちょ、ちょっと蘭! 余計なことは言わなくていいの!」
「ごめんごめん。というわけで名前さんも一緒に行きませんか」
「俺は別に────」

 いつも通りバイトが入っているからと断ろうとしたが、ふと脳裏をよぎったのはベルモットだった。百貨店にいたのは偶然だったのか、それとも何か組織が動いていたからなのかは今となっては確認のしようもない。しかし彼女が日本にいることは事実。それを知った上で組織に狙われている哀から離れるのは得策ではない。コナンの作戦により偽装工作をして死亡したと誤認させてはいるが油断のできる相手ではないだろう。そして何より、直感的になぜか嫌な予感がした。理論も根拠もない勘ではあるが、これまでの経験から名前は自分の勘を信じている。

「あー……そうだな、たまには付き合うか」
「ちょっとーこの園子様がせっかく誘ってあげてるんだから、もう少し素直に行きたいって言えないのかしらー?」
「はいはい。有難く参加させていただきますよ園子お嬢様」
「よろしい。じゃあ皆にも伝えに行こうか、蘭」
「うん。でも皆してどこに行ったんだろう。博士も見当たらないし……」

 蘭が家の中を見渡してみるが少し前まで賑わっていた阿笠邸のリビングはテレビの音がするくらいでいつの間にやら静かになっていた。出掛けるなら一言くらい声はかけるだろうし庭からも遊んでいるような声はしない。そしてもう一つ、阿笠がここ数日せっせと何やら作っていたこととホエールウォッチングを楽しみにしていたことを踏まえればおそらく地下の工作室にでも集まっているのだろう。名前がそれを伝えれば二人は地下への階段を下りて行った。
 ようやくテレビをゆっくり見れるとソファに浅く腰掛けて背もたれに寄りかかる。くだらないバラエティーには興味を失い番組を適当に変えていると地下から子供たちの歓喜の声が上がった。そりゃ喜ぶよな、とまるで他人事のように思いながら名前はリモコンからスマホに持ち替えてバイトのスケジュールを確認するのだった。


 大型フェリーで大海原を進むこと約十時間。八丈島に到着した一行は鈴木財閥が所有するベルツリーホテルへと向かった。阿笠のビートルには子供たちが、小五郎の運転するレンタカーには蘭と園子が乗り、その二台の車の後方には名前が運転するオフロードバイクのトリッカーが走っている。
 好天に恵まれた八丈島の景色は美しく、その雄大さは車中からでもよく見えた。子供たちは窓に張り付かんばかりの勢いで島に聳える八丈富士に釘付けだ。一方で盛り上がる子供たちとは対照的に精神年齢の高いコナンと哀は景色よりもスマホの画面に夢中だった。二人が見ているニュース番組では世界中の警察が管理している防犯カメラを繋いだ施設パシフィック・ブイの特集がされている。インターポールが新しく作ったというその施設では防犯カメラの画像を元に高性能な顔認証が可能ということらしい。
 確かにこれは興味を惹かれる内容だとコナンが思う傍ら、哀は顔認証システムの開発者として紹介された女性に僅かだが見覚えがあるような気がした。どこかで会っていたようなそんな感覚が。けれど思い出せないままパシフィック・ブイの特集は終わり番組は他のニュースへと移っていった。

「あ、哀ちゃん手首になにかつけてるの?」

 コナンの片耳に貸していたイヤホンを回収し自分の耳に差し込もうとしたところで歩美に声をかけられた哀は自身の手首に視線を向ける。腕を上げたことで袖口から覗くのは太陽の光を受けてキラリと光るステーションタイプのシンプルなブレスレットだ。普段は着けていない装飾品に気付くとはさすが女の子ね、と口元に軽く笑みを浮かべて見やすいように腕を前に出す。

「ブレスレットよ」
「わぁイチョウの飾りがついてて可愛い! いいなぁー歩美もオシャレしてくればよかった」
「あ! 見てください海面に水しぶきが立ちましたよ!」
「クジラか!?」
「え、どこどこ、歩美も見たい!」

 だがすぐに興味が大きな海の生物へ移ってしまうのもさすがは好奇心旺盛な子供と言えよう。花より団子。宝石よりも冒険が好きなのが少年探偵団だ。
 手首に着けたブレスレットをひと撫でしてから袖を元に戻した哀は隣でなぜか呆れた表情を浮かべているコナンに「なにか?」と口にはせず目を向けた。まるで文句でもあるのかと言わんばかりの視線を受けた小さな探偵はイチョウと聞いた瞬間にはもうブレスレットがブランド物であることを確信していたのだ。

「まーたフサエブランドかよ。あんまり博士の財布を虐めてやるなよ」
「いくら私でも節度は守るわ。それにこれは贈り物」
「贈り物ぉ? 誰から……って、あぁ、名前さんか」

 最近あった事の記憶を手繰り寄せるのは簡単だ。福引をしに米花百貨店へ行った時、哀と名前は列へ並ばずその場を離れていた。そして暫くして福引所へ戻って来た二人の歩いてきた方向にあったのはブランド物を販売する店舗。イチョウをモチーフにしたフサエブランドは人気のブランドであるから当然その店でも取り扱っていただろう。
 推理をするまでもなく結論はすぐに出た。どういった理由があって買い与えたかまでは二人の間にあったやり取りを知らないので推測する余地すらないが、名前ならば哀に対してそういう行動もするだろうというある種の信頼がコナンにはあった。

「ほんと、あの人はお前に甘ぇーよな」
「全くだわ」
「おいおい、甘やかされてる奴が言うかそれ」

 呆れを通り越して乾いた笑いを漏らしながら二台の車の後ろを走ってきてるであろうバイク乗りの青年に対し少しだけ同情の気持ちを寄せた。とは言っても本人はそこまで気にしなさそうではある。

「でも珍しいよな」
「なにが?」
「名前さんだよ。いつもは大抵断るだろ? 保護者役はそう何人もいらねぇーだろってさ」
「さぁ? 八丈島をバイクで走りたかったんじゃない」

 でもきっと違うでしょうけど、と声には出さず哀は呟いた。名前は自分と同じく集団での行動はあまり好まず、必要ではないと判断したらきっぱりと断るタイプだ。一方で素行の悪さとは裏腹に少年探偵団の面倒を見ることも多々ある。けれどそれは阿笠が急用で不在の場合や、どうしても大人が数名いなければならないイベントの時に限ってしまう。例外を上げるとすれば子供たちから執拗に強請られるか、まるで野生動物のように何かを察知している時くらいだろうか。今回の場合はおそらくその例外に当たるのかもしれない。同行すると聞いたときはコナンと同じく珍しいと思ったものだ。
 ドアに頭を預けてちらりと後ろを見れば丁度カーブに差し掛かったことで後方を走るバイクが見えて、哀はそっと目を細めた。


 ホテルに到着後、荷物を置いた部屋で暫し休憩をしてから出掛けようとしていた名前はやや不機嫌そうな顔でライフジャケットを片手に八重根漁港に立っていた。

「俺、今日はバイクで島を一周してくるって伝えたよな」

 そう、本来ならば子供たちがホエールウォッチングを楽しんでいる合間に持参したバイクで八丈島を見回る予定であった。普段遠方までツーリングを楽しんではいるがわざわざ船に乗ってまで離島へ渡ることはしない。ならばこの機会に未踏の地を走ろうというのはごく自然な思考であり行動だ。しかし物事はそう上手くは運ばないものである。
 名前の漏らした不満にいち早く反応したのは蘭だった。眉尻を下げて申し訳なさそうにしている。その隣では園子がもう笑うしかないといった様子で苦笑を浮かべていた。

「ごめんなさい、うちの父が……」
「別に毛利が謝ることじゃねーよ。おっさんには後で文句の一つでも言わせてもらうけどな。構わないだろ?」
「はい! もう遠慮なくビシッと言っちゃってください!」
「さすがおじ様よねぇ。期待を裏切らないわ」

 感心したようなその言葉には呆れも十二分に含まれていた。それもそのはず。今ここに立っているべきなのは小五郎のはずだったのだが、ホテルに到着して早々島酒を煽りに煽って酔っ払いそのまま寝てしまったらしい。どこへ行っても一貫して行動に迷いがないあたりは園子の言う通りさすがと言えよう。だが娘の蘭としては限度を弁えてほしいと先ほどまで怒りに肩を震わせていた。その姿を間近で見ていたからこそ名前は自分の予定が狂っても彼女を責めたりはしない。
 つまりは欠けた人数を埋め合わせるためにホエールウォッチングのツアー参加者として連れて来られたというわけだ。来てしまったものは仕方がない上に問い詰める相手もこの場にいない。名前は一人の時間を諦め現状を受け入れることにした。軽く溜め息を吐いてライフジャケットを着込むと、子供たちの傍に歩み寄りベルトがちゃんと絞められているかを確認する。

「クジラさん楽しみだね!」
「どれくらい近くから見られるんですかね」
「早く行こうぜ!」
「お前等はしゃぎすぎて船から落ちるなよ」

 はーい、と返事だけはいい少年探偵団の面々に小さく笑って今度は哀へと視線を向けた。すでにライフジャケットは身に着けておりベルトもしっかり絞められているのが見て取れる。とくに手助けの必要はなさそうだな、と曲げていた膝を伸ばして立ち上がりクルーザーへと向かう一行の後に続いて歩き出した。
 それから順にクルーザーへ乗り込んでいると別の船のエンジン音が耳に届いた。漁へ向かうにしては遅い時間だ。ならば他にホエールウォッチングのツアー客でもいるのだろう。順番を待つ間が暇だからと気まぐれに音のする方へと視線を向けると停泊する漁船の奥から一艘の船が出てきた。それを見て名前は思わず顔を顰めてからそっと目を反らす。同じくその船の存在に気付いたコナンが走り出したのを視界の端で捉えながら、俺は何も見なかったと心の中で呟くのだった。
 けれど簡単に気分を変えることはできないものだ。
 海上を進んでから暫く。クルーザーの目の前でザトウクジラが海中から飛び上がり巨体を仰け反らせながら優雅に背中から着水した。巨大な水柱が上がり、水しぶきがクルーザーのデッキに降りかかる。圧倒される迫力と冷たい水しぶきに子供たちだけでなく蘭たちも感嘆の声を上げた。その様子を一歩離れたところから名前は浮かない表情で眺めている。
 港で見た船は警視庁のものだった。だからコナンは何か事件の匂いを嗅ぎ取って迷うことなく後を追ったのだ。それだけならばいつものことだと素知らぬ振りができただろう。そうできないのは米花百貨店で偶然と呼ぶには都合が悪すぎる相手と会ってしまったからに他ならない。いや、もしかしたら全く関係のない事件かもしれない。もし組織が関わっているのなら警察よりもまずFBIが動いているはずだ。そういう規模の相手なのだから。クジラの大きな尾びれが何度も海面を叩き、降り注ぐ水しぶきに哀と歩美が楽しそうに笑い合う。あの時、ベルモットに気付かなければこうして無邪気に子供のように笑う彼女をただ微笑ましく見ていることができたのだろうか。
 そこまで考えて己を愚かしいと恥じた。随分弱気なことを考えてしまっている。相手が組織だろうとなんだろうとやるべきことは何一つ変わらないだろうが。そう自分に言い聞かせ一人表情を渋らせている名前に気付いた哀が仕方ないと言った様子で歩み寄ってきた。

「少しは周りに合わせたらどう?」
「生憎と正直者なもんで。哀は満更でもなさそうだな」
「そうね。悪くないわ」
「そこは素直に楽しいでいいだろ」
「お生憎様。私も正直者なの」
「そうでした…………でも、いいんじゃないか。子供みてぇにさ、当たり前に楽しんでいいんだよ。お前は」

 皮肉交じりな物言いは相変わらずだが、どこかいつもと違う雰囲気に哀は首を傾げる。しかし何かあったのかと口を開く前に子供たちに呼ばれてしまい聞くことはできなかった。
 名前は踵を返した哀の背中を見つめ、それから清々しい程の青空を見上げた。やるべきことはすでに決まっている。けれどそれを実地に移すようなことが起こらないのが望ましい。自分の勘は信じて疑わないけれど、思い過ごしであってくれたらそれが一番ベストだ。視線を戻せばそこには子供たちと一緒に笑顔を浮かべる少女がいる。何にも怯えず、楽しいことをただ純粋に楽しむことができる平穏な時間。彼女にとってそれがどれだけ重要なものなのかを考えれば、自分一人が勝手に気を張って頭を悩ませることなんて大した苦ではなかった。