説明会


 真面目か不真面目かと聞かれたら即答できる。不真面目だ。俺という人間を知る者の十人中九人は同じ答えを出すだろう。だからランク戦なんてまともにやっていないし、もちろんチームも組んでいない。なのになぜ俺は遠征選抜試験なんかに呼ばれているのか。事前アンケート? もちろんシカトした。そしたら根付さんに呼び出されて真面目にやれと怒られて結局その場で記入させられた。チーム無所属でB級下位の俺をなんで参加させるんだって聞いたら「城戸司令は君の本来の能力を把握しておきたいそうだ」と言われた。おまけに試験中手を抜いたらボーダーを辞めてもらうことになるといった脅し付きだ。稼ぎのいいバイトだから急に辞めさせられるのは勘弁願いたい。というわけで渋々参加することになった。
 それでも面倒なことには変わりない。説明会をサボろうとした俺の行動を予想していたのか早々に根付さんに捕まってしまった。目敏い人だ。保護者よろしくご丁寧にブリーフィングルームまで連れて行かれ放り込まれる。ここまで来てしまったからには仕方ない。腹を括ろう。一番後ろの席に座り部屋の中を見渡すとやはりというべきか自分の場違い感が半端ない。全員チームを組んでいる奴で、しかもB級中位以上。この場合、俺への好奇の視線は正しいがかなりうざい。俺だって来たくて来たわけじゃない。手を振っている犬飼は無視だ、無視。
 対象の隊員が全て集まり試験の説明が始まった。城戸司令の話はまぁどうでもいい。ある程度は根付さんから聞いていたし、俺にとっては本当にどうでもいいからだ。だが次いで始まった試験内容の話に耳を疑った。二次試験を含めてトータル九日間もボーダーに拘束されることをここで初めて知ったのだ。

「は?」

 思わず漏れた声はどうやら誰にも聞こえなかったらしい。九日間はさすがに前もって教えてくれてもよかったんじゃないか根付さんよぉ。学校はいくら休んだって構わないが俺はボーダー以外にもバイトを掛け持ちしてる。そのシフトを減らすってことは収入が減るってことだ。それなら試験なんて受けずに防衛任務をしていたほうが全然合理的じゃないか。今すぐここを出て行きたいが城戸司令の視線が厳しい。あの脅しは嘘じゃないぞというのがよく分かる。睨み返しても効果はなく、机に頬杖をついて試験中のバイトのシフトをどうするかを考える。ポアロは事情を話せば梓が代わってくれるだろうし、安室さんもまぁ暇だろあの人。他のバイト先も誰かに代わってもらわなきゃな。しかし一週間丸々シフト入れないなんてクビになりそうだ。クビになったら責任取ってくれるのかね、ここの大人たちは。

「聞いているのか、苗字」
「聞いてない」
「試験中はそういう態度は慎むように。苗字は歌川一番隊に加わってもらう」

 モニターを見るとすでにチーム別けが成されていた。一部隊五人編成だが一番隊だけ一人多い。バランスが悪くなるくらいなら無理に入れる必要はないだろうに。さて歌川ってのはどれだ、と前に集まった臨時隊長たちを見渡すと前髪を立てた精悍な顔つきの少年と目が合った。あれがそうだろうか。軽く手を挙げると会釈を返されたので多分合っている。改めてチーム一覧に視線を戻すが、一番隊で顔見知りなのは漆間だけみたいだ。他のメンツについてはあとで時枝にでも聞いておこう。
 ひとまず俺はこの説明会が終わったら根付さんに文句を言いに行くと決めた。