行き場のない懺悔


 いつも眠そうな目をしている時枝でも驚くとぱっちり開くんだな。暢気にそんなことを考えているのは単に現実逃避をしたいだけなのだろうか。次第に赤みを帯びていく頬に、やってしまったと後悔の念が渦巻く。なにするんですかって怒ってくれたら謝れるのに。時枝は優しいからきっと怒らない。拒絶してくれたら受け入れるのに。時枝の気持ちを知っているから期待できない。触れたままの手を振り払ってくれたら気持ちは楽になれるのに。時枝はそんなことをしない。そこまで考えて俺はなんて自分勝手な奴なんだと笑いそうになる。
 踏み込んではいけない聖域に触れてしまった。時枝にはずっと綺麗なままでいてほしい。なのに俺は自分の手で汚してしまった。これは大人の忠告を無視した自分への罰だ。時枝の優しさに甘え続けてきた自分の罪だ。謝ってしまったら傷付くのだろうか。泣いてしまうのだろうか。ダメだ、そんな姿を俺は見たくない。時枝には笑っていて欲しい。どこまでも身勝手な自分に腹が立つ。
 懺悔の言葉は誰に吐けばいい。罪の告白を誰に伝えればいい。俺は、時枝にキスをした、と。