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「おい、起きろ。」
日が昇った頃見張りをしていた父の世話役に起こされる。
瞳をとしていただけで眠ってなどいなかったのだが
ゆっくりと体を起こして
世話役の目を見つめると
男は忌々しげに鼻を鳴らした。
「罪人風情が、浅ましいにも程があるわ。」
顔を伏せると牢の錠を開ける金属音が
何もない部屋に響く
数歩足音が聞こえてきたところで
首にかかっている鎖を解き、
かわりに両の手に
大げさな新しい錠をかけられる、
その光景を他人事のように眺めていると
立ち上がった男に強く引かれて
反射的に自分も立ち上がる。
「当主不在の今、
お前の処遇はここでは
決められないということになった。
今からお前を移送する、
わかっているとは思うが
逃げようなどと考えるなよ。」
何も答えない私に男はまた鼻を鳴らす。
両手にかけられたものに引かれて歩くと
そこには久しぶりに見た大きな空があった。
思わず見上げたそれは
どこまでも広い青
伸びきった前髪がそれを遮るのが
やけに鬱陶しく感じる。
その次に見えたのは
幼い頃から育ったこの村の住人たちだ
その目は鋭く凍てついて、
言葉はなくとも自分に向けられている
敵意と憎しみを体現している。
ゆっくりと練り歩くように村を行くと
長く続いた石段の先に
絢爛な門が見え始める
一段一段引かれて踏みしめてゆく。
きっと、
私がこの段をこの足で下ることは
もうないのだろう
こんなに広い空を見ることも、
もうないのだろう。
その思いはひしひしと、
軋む体に染み渡った。