ルドガーの作る料理は美味しい。特にトマト料理。私も料理は出来る方だけど、こんなに美味しく上手には作れない。普通のレシピを渡した筈なのに多種多様なアレンジを加えてレシピの何倍も素敵な料理を振る舞ってくれるルドガーは純粋に凄いと思った。料理がそれなりに上手い人じゃないと下手にアレンジを加えたら逆に味を損ねてしまう場合があるからだ。私も見習いところである。

「どうしたらこんなに上手で美味しい料理が作れるようになるの?」

ふと、ルドガーに聞いてみる。今日私に出してくれたのはトマトオムレツ。ルドガーのお兄さんの好物だって聞いた。確かに、これも凄く美味しい。ふわふわの玉子は口の中でほろほろと溶け、酸味のある手作りのトマトソースは甘い玉子の味ととても良く合った。
お兄さんから貰ったなんて言う(余りセンスが良いとは言えない)エプロンを外しながらルドガーは自分の席へと着席する。以前、私ばかり作って貰ってて悪いんじゃないか、なんて聞いたら俺が遣りたくて遣ってるし自分の作った料理を美味しそうに食べてくれる人を見るのが好きだから全然構わないよ、なんて言ったルドガーは根っからの世話焼きだと思う。そんなルドガーだからこそ私は好きだし、良い所なんだと思う。世話焼きすぎて、ちょっと不安になってしまうぐらいだ。

「特にコツとかそんなのは無いな。ただ、誰かに喜んで貰いたいって思って料理を作ってれば自然に上手くなるよ」

自分で作ったトマトオムレツにスプーンを入れ、其れを咀嚼するルドガーは今日も良い出来だ、だって。その誰か、って言うのはルドガーで言えばお兄さんの事?なんて聞いたら照れ臭そうに笑ったから、きっとそうなんだろう。本当にこの兄弟は仲が良い。お兄さんは例えルドガーが作った料理が不味くても美味しいって答えてくれそうだけど。……そっか。お兄さんの為か。道理で料理がめきめきと上達するワケだ。誰かの為が何かの目的になる時、人は驚く程の成長を遂げる。私も料理が上手になりたい。料理だけに限らず、色々だけど。……もしそうなら、私は誰に喜んで貰いたいんだろう。誰の為に料理を作ろうか。…それなら。

「じゃあ私はルドガーの為に料理、頑張るよ」

特に身の回りで喜ばせたい相手も居ないし、だったら普段からお世話になってるルドガーで。料理上手のルドガーに料理を振る舞うのって勇気がいる事だけど。人に何かをプレゼントする時にその人の得意分野のものだけは贈ってはいけないって良く言うが、この場合それだ。だけど、それでも私はルドガーの為に料理を作ってみたいって何となく思ってしまった。作る側として喜ぶルドガーじゃなくて、作られた側として喜ぶルドガーが見てみたい。

そんな単純明快な理由だけどルドガーが嬉しそうに笑って楽しみにしてる、なんて言ったからこれは本気で頑張らなきゃなあってそう思った。