「え、ヒムロ教授まだ現役なのか?」
「うん、高学年の魔法薬学担当してるよ」
「……あの人、もういい歳だよな?」
「聞かれたら殺されるぞシリウス」
「ヒムロ教授はそんな事しないだろ」
「いや、リドル教授に」
「……あー……」

ハリーは困っていた。
両親の同級生だというこのふたりが家に来てからもう数時間は経とうというのに、買い物に出た母が戻らないからだ。
ちなみに、父は彼らが昔から苦手なので、今日1日だけは学校に戻っている。話題は、かの薬学教授であるエリーことリン・ヒムロのことだった。ハリーも初めて実年齢を聞いた時は目玉が飛び出るかと思うほどに驚いたことは記憶に新しい。なにせ、見た目だけで見れば(東洋人だということを差し置いても)自分の母よりも年下に見えた彼女が、実は60代だというのだから、その驚きようも当然だろう。
事実、彼女と夫のリドルは、ホグワーツ幾つか不思議のひとつだった。

「相変わらず若いのか」
「うん。母さんよりも若く見えた……」
「東洋人だからなぁ、あのひと」
「それ以前の問題だろ?歳取らなすぎだよ」
「ゆっくり老化する身体だって言ってた。魔法薬作ってる時失敗したって」
「あー……ありゃ確信的だろ。あの人が失敗とか有り得ねー」
「だね。ほんと凄腕の魔法薬師なんだよ、あれで」
「そうなの?」
「脱狼薬って知ってるか?」
「うん、名前だけなら」
「それな、完璧なもんに仕上げたのがヒムロ教授なんだよ。」
「あとアレだ、万能治療薬作ったのもあの人だし、ハリーが知ってそうなヤツだとアニメガジュース作ったのもあの人だし」
「え、あれってヒムロ教授が作ったの!?」
「あぁ、俺らが学生だった時にな。おかげで一時期大流行した」

アニメガジュースとは、魔法族の子供にとってはポピュラーな駄菓子の一つで、アニメーガスになれるジュースである。実際、ハリーも小さい頃よくそれで遊んでいた。ちなみに何になるかは完全にランダムで、効果は30分ほどで切れる。完全な動物になるわけではなく、耳や尻尾などの一部分だけが現れるという、なんとも彼女の趣味を反映させすぎたものだった。

「……全然知らなかったや」
「まあそういうこと周りに言わないからなぁ、あの人」
「実際ゾンコの何割かはヒムロ教授が発案したヤツだろ」
「ゾンコまで!?」

多才にも程があるんじゃなかろうか。天才的に頭がいい人だとは、寮監でもあるマクゴナガルからも聞き及んで知っている。なにせ、マクゴナガルは彼女と同級生だったのだ。

「俺らが仕掛けたイタズラは殆ど効かなかったどころか、倍にして返されたな」
「あーうん、しかも校長も笑ってるだけだし、何よりリドル教授めっちゃ怖くてね」
「……そうかなぁ。厳しいけど凄くわかり易い授業してくれるけど」
「あの人はな、ハリー。ヒムロ教授が絡むと途端にガキになるんだよ……!」
「物心着く前から一緒にいた幼馴染で、ふたりして初恋貫いて夫婦になったんだろ?それくらい当たり前じゃないか?つか今でも変わらずか?」
「うん、仲いいよ。ご飯は必ず二人で食べてるし、ハーマイオニーは『何年経ってもラブラブな夫婦って憧れる』って」
「相変わらずかぁ」
「そう考えたらリリーとスネイプもそうだろ?幼馴染みで、夫婦で、リリーは知らないがスネイプは初恋だろ?」
「あー……そうなるねえ。まさかあのふたりがくっつくとは僕思ってなかったよ」
「そ、そうなの?」
「ジェームズはな、ハリー。リリーが好きだったんだよ」
「え?」
「シリウス!」
「でな?スネイプにちょっかい出しちゃリリーに怒られて、嫌われたんだ」
「……父さんがジェームズおじさん苦手な理由って、それ?」
「だろうな。ジェームズがリリーとここまで仲直りできたのは奇跡なんじゃないかと俺は思ってる」
「……うん、僕もそう思う……」
「やめてくれないかな!僕もう吹っ切ったんだけど!」
「リリーに付き纏いすぎてキレたスネイプと決闘ごっこまでしたやつが何言ってんだ」
「シリウス!」

残念なイケメンってこういう人のこと言うんじゃなかろうかと、ハリーはいつだったかエリーから聞いた聞きなれない単語を思い出していた。顔はいいのに中身が残念な男の事を言うのだと、ハリーはそうなっちゃダメだと言っていたエリーの気持ちが、なんとなくだがわかった気がした。

「そんな事言ったらシリウスだって!ヒムロ教授を生徒と勘違いして一目惚れしたとか何とか口説いてリドル教授に丸七年ねちねちいびられてた癖に!」
「……(だからヒムロ教授、シリウスおじさんの話題出すと苦笑いなのか……)」
「それ今ハリーの前で言う事か!?」

ハリーは、今ならエリーの言っていた言葉の意味が良く解った。
確かに、こんな大人にはなりたくない。
口を挟んだら自分にも火の粉がかかるだろうからと、ハリーは何も言わずオレンジジュースを口に運んでいた。正解である。

「たまにね、ヒムロ教授もうちに来るんだよ」
「、夫婦で?」
「うん。時々、ひとりだけど」
「あぁ、そういやスネイプと同じ魔法薬学の教授だもんな」
「ヒムロ教授は高学年で、父さんは低学年担当なんだよ。」
「ヒムロ教授の授業、厳しいからなぁ。スネイプも相当だろうが、それに輪をかけて厳しいと思うぞ。」
「ロンのお兄さんは泣きながらレポート書いてたって」
「……ってことは、相変わらずなんだな」
「ヒムロ教授の課題えげつないからなー」

良かった、話題逸らせた。
両親と同じ年だというのに精神年齢はハリーと同じくらいだろう程に大人気ない2人を横目に、ハリーは深く溜息を吐いた。
母さん、速く帰ってきて。僕もうつかれた。
そんな弱音はジュースと共に飲み込んで。



あったかもしれない未来の話
(ただいまー)(、母さん帰って来た)
(やぁ、お邪魔するよハリー……ん?ポッターとブラックじゃないか、久しいな)
(げっ、)(ヒムロ教授……!)
(あれ?リドル教授は?)
(リドルは今日は留守番だよ。魔法省に行く用があるからね)
(よ、よかった……リドル教授まで一緒だったら俺死んでた)
(……シリウスおじさん……ほんと何されたの……)
(相変わらずリドル教授が苦手なのねぇ、シリウスは)



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セブリリっつかリリセブは夫婦になるべきだと思うんだこの時間軸は。
だもんで、ハリーは名前だけ同じで見た目はスネイプ教授に似てる+目はリリー

っていう感じのほのぼのドタバタコメディ書きたい、時間欲しい。

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