壱  



「えっと、改めまして…こほん。お初にお目に掛かります。私、首切り椿と申します。末長くお仕えいたしますので、どうぞ良しなに」
「はい喜んで末長く俺の側に居てください」
「はい、主様」
「…〜〜〜っ!!!これこれこれ!俺が望んでたのはまさにこれ!椿ちゃん名前物騒だけど良いよ!純日本人って感じ!俺の理想ドンピシャ!有難う政府ぅ!」
「えっと…」


畳をバシバシ叩きながら身体を震わせる私の新しい主様は、何処か体調でも悪いのでしょうか?慣れない身体に戸惑いながらも出された座布団に腰を落ち着かせる。

ちらりと視線を主様から加州清光様に向けると、諦めにも似た溜め息を吐き、首を横に振られてしまいました。どうしましょう。


「…ちょっと主。椿が困ってる」
「おっといけねぇ。あー、ごほんげほん。俺は此処の審神者で宇里うりって言います!勿論偽名!椿ちゃんになら真名教えちゃっても良いかな寧ろ椿ちゃんになら神隠しされたいって思うんだけど、俺一部の刀から「私という存在が在りながら他に目移りするとは言語道断。いっそその目くり貫いてしまいましょうか」何て狂気的な感情を向けられてるので教えられません!23歳独身現在彼女募集中よろしくぅ!」
「因みに童て」
「黙れ」
「あ、ハイ」


主様…何と言うか、独特な自己紹介をそのような笑顔で言われても困ります。どう反応すれば良いのやら。取り敢えず「ご丁寧に有難う御座います」と頭を下げておきました。


「何か困ったことがあったら何でも相談して!君は今日から俺の近侍なんだしね!」
「ちょっと待って!?俺は?!?ねぇ、俺はどうなるの主!?」
「ふ…嘗ては激しく愛していたさ。でも俺は新しいものに目移りする罪な平成生まれのゆとりっ子。許せ加州…」
「くたばれ」
「あっれ、加州君?!そこは「止めて、俺を捨てないでよ!ねえ、どうすれば俺を愛してくれるの!?ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ!!!」ってすがり付いて泣いてくるとこ──」
「主変な漫画読みすぎ仕事してよ全く。また提出期限ギリギリになって慌てて政府に泣きついて期限伸ばしてもらうのがオチじゃん」
「うちの加州が厳しすぎて生きてるの辛い」


よそんちの加州さんあんなに主好き好き俺の事大好きだよね?愛してるよね?俺も大好き愛してるだから捨てないでねなヤンデレさんなのに。

よよよ、と着物の袖で目元を拭う主様と、それに冷ややかな視線を送る加州様とこんのすけ様。私は中々に強烈な個性を持った主様の所に来たようです。


fetter world
ALICE+