追いかける背中




耳を塞ぎたくなるような激しい銃声が鳴り響く。と言っても最初に比べると大分静かになってきた方だろう。先程から銃声を鳴り響かせる奴に照準をあわせ、引金を引く。トン、という軽い音と共にその人物は糸が切れた人形のように崩れ落ちた。ふぅ、と溜めていた息を吐き、廃車を背にしながら慣れた手つきでリロードをする。その際チラリと隣にいるギリースーツを纏っている大尉をみれば、トントンとテンポよく撃っているようで、この調子でいけば此処から逃げ出すのもそう難しく無いように思える。頼もしい、と自嘲しながら薄笑いを浮かべる。

***

小包≠破壊するのが私とマクミラン大尉に任せられた今回の任務だった。そして、私達はその任務を完遂した。そこまで別段何事も無く行けた、…今思えばそれがいけなかったのだろう。順々に物事が進んでいくのですっかり油断していた私に突如犬が襲いかかり、思わず銃を撃ってしまったのだ。幸い素早い反応のお陰か無傷だったのだが、どうやら撃った銃にはサイレンサーがついてなかったようで、轟音を撒き散らしてしまった。そして、その銃声を聞きつけ敵がわらわらとやってきてしまった。

これが、つい先ほどの事だ。
ふと一際高い断末魔が聞こえ、数発銃声が鳴ったかと思うと大尉が私と同じように廃車を盾にしながらリロードをしていた。

「大尉、その、先程は…すいません……」

先程の事の後ろめたさから視線を落として言うと、「気にするな」といつもと変わらない声が返ってきた。(声を聞く限りでは怒って無いようだ)
勿論、そんな言葉を聞いて後ろめたさが無くなる訳がなく「でも…」と引きずる。が、その頃には大尉はリロードし終わった銃で先程と同じようにトントンと撃っていた。そうだ、今は話している場合ではないのだ。これ以上迷惑をかけない為にも、と気を奮立たせ、少しだけ身を廃車から出し照準を合わせる。
次の瞬間、スコープ内にいた敵が倒れた。私はまだ引金を引いてはいない、と言う事は大尉が撃ったのだろう。ぬ、と私の上に影が伸びてきた。影を追って顔を上げれば、大尉が立って私を見ていた。一瞬、目が合いそうになったが、先程の事もあってかすぐに目を落としてしまった。逃げている、このままでは駄目なのに。そう分かっているのに顔を上げる事が出来ない自分が嫌になり、思わず顔を歪める。
そんな私の様子を見てか大尉はふぅ…とため息を吐いたようだ。もしかして本当に呆れ返させてしまったのだろうか。不安に駆られ、ばっと顔を上げた。すると其処には呆れ返った大尉の顔が…ではなく、軽く笑っている大尉の顔があった。

「全く、いつまで引きずっているんだ。気にしてないと言っているだろう?」
「でも………いて」

話している内に徐々に落ちて行った視線が、頭にきた軽い衝撃によって再び上がった。どうやら大尉に小突かれたようだ。

「それでチャラだ。さぁ行くぞ、あまり時間が残って無いからな」
「っ、はい」

ぐっ、と腕を引っ張られ立ちあがる。私が立ちあがると大尉はザクザクと先を歩いて行った。(あぁ、まただ。)また私は大尉の背中を追っているだけだ。(だけど、)だけど何故だろうか。大尉の背中を追う事が…そう、心地よい。大尉の背中は頼りになって、温かくて、気持ち良くて。これは甘え、甘えだ。そう、分かっているのに。

(もうちょっと、もうちょっとだけこのままの距離感でいたい、なんて)

(100514)






- ALICE+ -