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*技師系が得意で血がトラウマ主人公。notボス


「君がマットミラー君だろ?全く、年上を拘束するだなんてどうかと思うね」

感情を表に出さないよう努めつつ、椅子に拘束された手をほどけないものかと錯誤していると、目の前にいる男が不敵に笑った。
マット・ミラー。16歳。インターネットに住みつくムカつく子供みたいなヤツだ。

「無駄無駄、解けないよ?往生際が悪いなぁ、デッカーに喧嘩売って逃げ切れるなんて思ってもなかっただろうに」
「勿論逃げ切れるなんて思ってもなかったさ。ただ、こんなに早く捕まるとも思ってはなかったけどね」

ふん、とほんのり睨みながら言えば、マットは臆する事もなく勝ち誇った笑みを零した。
キンジーがデッカーに捕まったと聞いて居ても立っても居られず、オレグに電話で助けをこうたのが先程の事だ。そこまでが良かったのだが、勿論その行為をデッカーが見逃す筈も無く。あえなく私も捕まったということだ。しかし、私も素人ながら時間稼ぎをしたつもりだったのだが、こんなにも早く捕まったのは十中八九目の前に居る男のせいだろう。

「ケンジントン君を助ける為に情報を流したんだろう?ほんと泣ける話だね・・・ねぇナマエ君?」

名前を呼ばれた瞬間、思わず舌打ちをしたくなった。顔に出さないようにしていたのだが、顔を注視していたマットは気付いたようで、子供のようにはしゃいだ。

「君の事は知ってるよ?モーニングスターのクローン機械・・・あれは素晴らしいね」
「何のことかな・・・全く分からないね」
「そう?なら君の隠れ家にあったあのハンマーとローラースケート・・・アレはどう説明してくれるのかい?」
「・・・!」
「やっぱり、あれは君の作品だったんだね。行方不明になってから随分と探してたけど、アジトを見つけられたって事は順当に君を追跡できてたようで嬉しいよ」

数ヶ月ほど前に、私のパソコンに記録して置いといた作品案と試作品が消えるという事があったのだが、どうやら犯人は目の前にいる子供のようで。怒りに先程よりも一層強くギロリと睨めば、マットは臆することなくおぉ怖い怖い、とおどけて見せた。

「君は優秀だね。あんな凄い作品を作るだなんて・・・でも作品は、完成したものじゃないよね?量産しようにも高い割合で不良品ができるし、ローラースケートに至っては女の子じゃなければ使えないし」
「さぁ?それは君達の技術力が低いからじゃないかな?」

目を合わせないようにしつつ言えば、ぐい、と髪を掴まれ無理矢理目線を合わせられる。痛さに顔を顰めれば、眉を寄せたマットが口を開いた。

「君は今の状況分かってるのかい?」
「分からないし分かりたくも無いね・・・!」
「ふぅん・・・えらく強気だけど、これでもその姿勢で居られるかな?」

はぁ?と訝しげに睨めば、マットは掴んでいた髪をパッと離し、ポケットから何かを取り出した。
マットは数秒ほどそれを確かめるかのように眺めた後、不敵な笑みを浮かべこちらに見せてきた。何なんだ、と数秒ほどそれを注視していたがキラリと光った何かに思わず目を見張る。そして、それが何か理解した瞬間思わず身が竦みあがった。

「コレが何か分かったみたいだね。そう、ピアッサー・・・君の大嫌いな血が出て、痛い系の物さ」

思わずぶわりと嫌な汗が浮かぶ。先程よりも一層暴れるように動き、逃げれないかと画策するとマットが声をあげて笑った。

「あははは!本当にこういうのが苦手なんだね」
「べ・・・つに・・・!」
「嘘は良くないなぁ?言ったでしょ、君の事は良く知っているって」

ほぉら、とピアッサーを目の前にちらつかられると、小さな悲鳴が漏れ出た。勿論マットが聞き漏らすはずがなく、上機嫌に「何処に穴を開けて欲しいかい?」と笑顔で聞いてくる。冷や汗を浮べながら、「やめてくれ・・・ないかな・・・」と、搾り出すように声をあげれば、マットは少しばかり驚いたようだった。

「君って・・・割と苛めたくなる人間だよね」

先程と違い、優しく髪を梳くように髪を撫でた。もっとも、今のナマエにとってはその優しい行為でさえも恐怖を煽るだけだったが。

「落とし前つけてから言おうと思ってたけど・・・まぁいいや。ねぇ、デッカーに入らないかい?そしたらコレはやめるよ」

ナマエは震える声で、嫌だ、と言った。途端にマットは顔を顰めた。

「ふぅん・・・まぁいいけど。どのみち最終的には仲間になって貰うしね」
「・・・!どういう・・・」
「うん?金の卵をみすみすと投げ出す人が居ると思うかい?まぁいいや、NOと言うのなら遠慮なく穴を開けさせて貰おうかな」

ガシリ、と耳を掴んで引張られる。「怖いかい?大丈夫・・・思っているほど痛くないかもしれないよ・・・?」と耳元で優しく囁くその声に、恐怖で目が潤んだ。
穴を開けられるか今かという瞬間、恐怖の余り身を動かした。それが吉と出、耳元でパチンと弾ける音が鼓膜に響いた。

「困るなぁ、動くだなんて」と苛立ちを含んだ声色で言いながら、ナマエの顎を掴み自分に視線を向けさせる。「あーあ、ピアッサーが無駄になっちゃった。これ、使いまわしできないんだよ?」と、眉を寄せるマットとは対称的に、ナマエは幾ばかりか安堵していた。そしてあわよくばこのまま何もされない事を願っていた。

だがその淡い希望はいとも簡単に砕かれた。目の前で予備のピアッサーが、マットに手渡されていた。「今度は逃げれないようにしっかり掴んでおかないとおかないとね」そう言いながら再度耳に手を伸ばしたが、ふと何かに気付いたように手を止めた。ナマエは先程の事がトラウマを蘇らせ、酷い眩暈に苛まれた。
酸素が周ってない頭で、まるで傍観するようにマットの声を聞いていた。ナマエを竦み上がらせるような事を言ったのだろうが、本人はもう反応を返す程の元気も無く。想像と違った反応にマットは首を傾げたが、脂汗を浮かべるナマエの姿を見て何処となく察したようだった。

にこやかに笑うマットが何か言っているようだったが、相変わらずナマエの耳には何も入ってこなかった。マットは部下に一言二言命令するとナマエの頭を持ち上げさせ、顎をほんのりと指で押し、口を開かせた。弱りきっていたナマエはまさにされるがままで、涙で微かに目頭が赤くなった目で、マットを見上げていた。
涙目のナマエに見上げられ、マットは人知れず劣情を抱いた。思わず方頬が釣りあがり、口に弧を描いた。だらしがなく開いた口に指を入れ、舌を引っ張り出す。流石にこの行為には呆けた頭でも驚き、「んー!」と舌を引っ込めようとしたが、マットがそれを許すはずもなく、ギリリと爪を立てられる。
「ふ・・・!」と痛さに喘ぎ、思わず溜まっていた涙が零れた。

「ごめんね、痛かったかい?けど、これからもっと痛い目に遭うんだから・・・頑張ってね」

何を言っているのだろうと疑問に思ったが、マットが片手に持っているピアッサーを見て思わず青ざめた。

「うん、分かってくれたようだね。耳が嫌だったみたいだからね、こっちにしてあげたんだよ?まぁ、感覚の塊みたいな所に穴を開けるんだから少しばかりは痛いだろうけど・・・我慢してね?」

笑顔でサラリとそんなことを言うのだから、ナマエの瞳は恐怖に揺れた。いやいや、と言うように首を振ったが、マットは笑みを零しただけだった。
キンジー、と頭の中で彼女の名前を呼べば、幻聴か彼女の声が聞こえた気がした。次いで暴れているような音が微かに聞こえ、どうやらマットも不振に思ったらしく、顔を他に向けてデッカーに何事かを聞いているようだった。突如扉がけたたましく開いたかと思うと、息を切らしたデッカーが入ってきた。

「大変です!セインツどもが・・・!」

次の瞬間、息を切らしたデッカーは扉からぬっと伸びてきた手に掴まれると、あちら側に引きずり込まれ視界から消えた。視界から消えると同時にパン、と銃声が聞こえ、硝煙と血の臭いが鼻をついた。前の事と重なり、ナマエは気絶寸前な精神状態だった。
恐怖心によって歯の根が合わず、カチカチと小さな音が漏れでる。辺りでは皆重火器を手に取り、扉に向かって発砲していた。マットは部下の護衛に連れられ、この場を去ろうとした。マットが丁度上へと続く階段に差し掛かった時だった、突如閃光弾が炸裂し、視界が奪われる。その間に数人の悲鳴が聞こえ、血の臭いも一層強くなった。

「ナマエ!!」と私の名前を叫びながらキンジーが部屋に飛び込んできた。すぐさまナマエの姿を見つけて安心したようだったが、苦しそうにしている様子に神妙な顔つきになった。そしてキッとマットを睨みつけ、怒り心頭な様子で声を荒上げた。だが、マットはキンジーの言葉に嘲笑うかのように挑発した。

「ケンジントン君じゃないか、遅いご到着で・・・。あ、ナマエ君には楽しませて貰ったよ?」そうマットが挑発すれば一瞬にしてキンジーは釣られた。マットは一言二言会話すると頃合をみて階段を上り、「cheers!」と言うと視界から消えた。キンジーは「待ちなさい!」と静止の声をあげたが、マットが視界から消えても追わずに真っ直ぐにナマエの方へ走ってきた。

「大丈夫!?怪我は無い?」
「キンジー・・・無事、だったんだ・・・。よか、った・・・」

という事は、電話でオレグにお願いした通り、キンジーを助けてくれたようだ。よかった、と安心した瞬間、気が遠のいていくのを感じた。最後に聞いたのは、キンジーが必死に私の名前を呼んでいる事だけだった。


マット君も一応ギャングのボスだしちょっと位酷い事でるよね!
(20120208)








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