※火防女殺害に丁度出くわした主人公設定なので非常に喧嘩腰です。あとプライド高いよ!
ふわりと浮いた腕の感触に思わず目を見開く。弾かれた、そう悟った瞬間目の前の敵が不敵に笑った気がした。
ぶつりと己の肉が貫かれる。あまりの激痛に跪き、荒い呼吸を繰り返す。刺された腹部を押さえるが、指の隙間から血が流れ出て行くのが分かる。明らかな敗北と確実な死に、憎しみを籠めて目の前に佇むロートレクに舌打ちをする。跪いている今なら殺すのは容易い事だというのに、ロートレクは私を見下げたまま動かなかった。
「何故、殺さない」
「何か勘違いをしているようだな、貴公。私は元より殺すつもりは無い」
何を言っているのだと、怪訝な顔で睨む。成る程、先程のパリィで胸を刺さなかったのは殺さないためか。
「貴公には助けてもらった恩がある・・・どうだ?貴公が謝ればこの事は水に流してやろう。」
「ふざけるな・・・!誰が・・・!」
怒りを込めた目で鋭く睨めば、ロートレクは「ほう・・・なら・・・」と意味深な台詞を残し、私の肩を蹴り倒した。
どさりと倒れる衝撃に、腹部の傷が痛み、思わず呻き声が漏れる。そんな事もお構いなしにロートレクは私の剣を拾い、数度確かめるように剣を握りなおすと此方に向き直った。
「なにを・・・」
「喋るより、歯を噛締めておいたほうがいいぞ?」
ぐ、とロートレクの足が私の片腕を動かせないよう力強く押さえる。そして何の躊躇いも無く、ロートレクは腕に刃を振り下ろした。突き刺さった刃は肉を貫き、地面に深く刺さる程だった。
あまりの痛さに、顔がゆがみ、ブワリと脂汗が浮き出る。しかしここで醜態を晒すなど、死ぬより嫌だ。思いっきり唇を噛締め、漏れでる呻き声を最小限に抑える。強く噛締めたせいか、唇は切れ、血があごをつたる。
この状況下で、己の身体よりもプライドを守るその姿は、ロートレクの加虐心を大きく駆り立てた。その気になればダークリングで逃げる事もできるというのに、それさえも拒む姿は気高く思えた。
_壊したい
仄かに潜在していたその意識は、確実に色濃く、そして狂気を含み顕在されつつあった。ロートレクは冑の中で方頬を上げ、人知れず笑った。
もう何度目になるだろうか。腹部の傷を踏みつけたり、腕に刺した剣を傾かせ傷口を深まらせたり、ショーテルを首にあてて薄い傷を作ってきたりなど、数え切れない程の暴力を受けた。その度に「謝りたくなってきたか?」と促してきたが、それももう前の話だ。今では髪を掴み、方膝ついたロートレクが同じ目の高さで「クックックックッ・・・」と笑い出す始末だ。
「ここまで満身創痍になりながらもまだ拒むというのか、貴公」
うるさい黙れ。と毒突きたかったが、もはや声に出すほどの体力も残っていなかった。視界はぼやけて焦点もまともに定まらなくなってきたが、ロートレクを睨む事だけはやめなかった。私にとって、出来得る限りの唯一の反撃方法だったらだ。
突如、ロートレクは覆いかぶさる様に私の上に乗り、そして片腕でショーテルを私の肩にゆっくりと突き刺した。長引く痛さに思わず顔を歪めると、直ぐ目の前にいるロートレクが心底嬉しそうにクックックック・・・と笑い声を上げた。出来る事なら顔を逸らしてやりたかったが、もう片方の手で髪を掴まれ、強制的に視線を合わせられた。私は最後の力を振り絞り、死んでしまえ、と吐き捨ててやったが、ロートレクは相変わらず愉快そうに笑った。
(貴公もずいぶんと強情な奴だな。・・・しかし今の姿も中々様になってきているぞ?クックックックッ・・・・・・)