陰謀





 ここはレヤウィンの付近にある洞窟内。そして私は戦士ギルドのガーディアン。
 なぜ私が洞窟に居るというと、まぁありきたりだろうが依頼があったからだ。
依頼の内容は至極簡単。洞窟内のトロールを一掃して来いという事だった。
まぁ任務内容については不服は無いのだが、(あるとしたら任務期間位だ。一週間以内に終わらせないといけないらしい。行きと帰りで6日間もかかるのにね!)ちょっと色々おかしいのだ。

「むむー」

目の前にあるのは端から端へ繋がれた細いロープ。そして奥にはどうやら丸太が置いてあるようだ。
(何故トロールがいる洞窟にトラップがあるのさ…)
ぶつぶつ心の中で文句を言いながら足下のロープを引く。
ガラガラガラ、と案の定上から丸太の山が降ってくる。
私は数歩、後ろ下がり丸太が当たらないような場所へ移動した。



完全に落ち着いた丸太をよけながら、今回の依頼について悶々と考えてみる。

ここの洞窟に入ってから一匹もトロールを見ていない。
それにこのトラップ。トロールというのはさほど知能が高く無い。だからトラップなんて作れるはずが無いのだ。

盗賊の住処だったのかと思った。が、生活感あるものは無かった。
来る洞窟を間違えたかと思い、何度も地図を見直した。が、どう見ても地図は此処を指している。

うーん、と頭を捻りながら進んで行く。途中数個トラップがあったが壊しながら進む。
結局納得がいく答えを出せずに最深部に着いたようだ。

「最深部に着いちゃった…」

ざっと辺りを見回し、敵がいないか確かめる。
一度立ち止まり、耳を澄ます。カサカサ、と何かが動いた音が聞こえ、剣を取り出して音が聞こえた方へ向かう。やっとトロールか、と内心呆れつつ喜んでいる自分がいた。一匹でもトロールを狩ってしまえば依頼完了となるのだ。これほど楽なことはない。
だが、ラトの期待はあっさりと裏切られた。ラトの足元にいるのはただのネズミ。ふぅとため息をつき、肩を落とすのだった。

あれから暫く探索し隅々まで確かめたが、結局ネズミしか居なかった。

依頼内容が現実と違っているなど、初めてだ。
少々困惑したが、嘘を報告する訳にも行かない。踵を返してうなだれ、深いため息をつく。
きっと依頼者は洞窟の印をつける所を間違えたのだろうなぁ…。そう思いながら道中ギルドにどう言い訳するかを考えていた。


通って来た扉をくぐり抜け、出口に向かっているときだった。
前から足音聞こえ、ふと顔を上げると1人のガジートが私に剣を振り下ろしている。

「シエァァァアア!」

「う わ」

とんっ、と後ろに本能的に避けたのだが、どうやら反応が遅かったようで手の甲から血が溢れていた。
ガジートは続けて攻撃を繰り出す。ラトはそれをかすり避け、急いで鞘から剣を取り出し、続けてだされた攻撃を弾く。
早い反撃のせいか、反動によってガジートの腕が浮く。

「がら空きっ!」

反動によって怯んだ相手に踏み込む。そして一撃を−−−

「空いているのはお嬢ちゃんだろ?」

「!」

突如、後ろから攻撃されたのだ。が、寸でのところで避けた。相手はまたガジート。武器はメイス。

「…さっき全ての部屋を回ったのに。」

「何で居るかって?はん、決まってんだろ?お嬢ちゃんが見終わった部屋に隠れてたのさ。」

という事は私はずっとつけられていたらしい。
軽蔑した眼差しでガジート達を睨み付ける。

「二対一で攻める何て恥ずかしいと思わないの?」

「二対一?ふははははは!そう思ってんのか!?」

「何が可笑し…」

ヒュッ
風を斬る音とともに、頬から血が垂れていた。
前を見据えると、アルゴニアンが弓を構えている。

…つまりこれは二対一ではなく、

「三対一だ。ククク、理解したか?」

そう言って、ガジート達が攻撃してくる。

攻撃しようにも、ガジート達がお互いの隙を埋めるように攻撃して来るので、避けるので一杯だった。そしてアルゴニアンからの攻撃、矢が貫通する事は避けれても、完全に避けきることは難しかった。次第にかすり傷が目立ってくる。

相手は長期戦で来るつもりらしい。そのせいか、無理な攻撃はしてこなかった。
この手の戦法は一人欠けると大分楽になるはずだ。
ならばと思い、後ろに数歩跳ねるように下がる。ガジート達が追いかけて来る。が、大分距離がある。
ニヤリ、と笑みを浮かべる。これならいける。
右手を丸め、召喚魔法を唱える。

召喚した場所はアルゴニアンの後ろ。つまり…

「がぁぁぁ!」

アルゴニアンの悲鳴が洞窟に木霊する。
何事、とガジート達が振り返る。そこで見たものは、血で真っ赤に染まったクランフィアだった。
どうやらクランフィアはアルゴニアンの首を食いちぎったようだった。首根っこが半分になっている。
相手の意識は完全にクランフィアに向けられている。
その間に後ろから、最初に攻撃してきたガジートのうなじに剣を突き刺した。

「がっ!」

もう一人のガジートは、彼の断末魔でやっとこちらに意識を向けたようだ。
相手は横に飛び、私とクランフィア両方から距離を取った。

「形勢逆転、だね。」

「…」

私の言葉に、ガジートはぎりりと歯ぎしりをする。

「あなた達は一体何者なの?」

「…」

無言。どうやら何も言わないつもりらしい。
仕方がない、と私は剣を構え直す。

突然、ガジートは剣を首に当て、にやけ顔でこちらを見てきた。

「まさか失敗するとはなぁ…ま、丁度いい。そろそろ俺様もウンザリしていたんだ」

「?…一体何が丁度いいの?」

「はん…その内分かるさ。じゃあな、お嬢ちゃん」

ガジートは苦笑しながら、首に当てていた剣を引く。
ガジートは支えを失った人形のように、前へ倒れた。

「…」

呆然と立ち尽くしていると、とてとてとクランフィアが歩みよってくる。そして猫のように顔を寄せて甘える。

「よしよしクランフィア。良くやったね」

すりよせてくる頭を優しく撫でてやると、嬉しそうな声をあげる。
とりあえず傷だらけだったので、簡単な回復魔法を唱えて傷からでる血を止めた。

応急処置を終え、私はこの事を伝えるべくコロールに早急に帰る事にした。





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