ちゅんちゅん、と鳥のさえずりが静寂を破った。ブラインドからは朝日がこぼれ、ラトの目に落ちる。ラトは眠たそうに体をよじらせ、もっと寝ていたいというように毛布を被り直す。そしてまたスヤスヤと軽い寝息を立てた時だった。
「おいこら起きろ」
「いてててっ!!お、起きた起きた!!」
ぎゅむーっとほっぺが引っ張られ、痛みが走る。せっかく人がいい気分で寝ていたのに、とため息をつく。依頼後位はゆっくり休みたいのに、という私の心情などお構いなしにコイツ・・・もといオレインはブラインドを上げる。外はまだ薄暗く、太陽はまだ昇っていなかった。時刻は大体5時半位だろうか。普段なら絶対に、絶対に起きない時間帯だ。
そのせいかまだ瞼が重く、動くのも正直キツイ。このままベットに潜れたらどれだけ良いことか。眠たい目をこすって身支度を整える。オレインはすでに下に降りているようだ。
深夜のあの後、自力で起きれる気がしなかったので、オレインに明日起こして欲しいと頼んだのだ。オレインはかなり嫌そうな顔したが、依頼を頼んだのは俺だしな、と言うとしぶしぶ承諾した。そして鍵を渡し、別れたのだった。
下へ降りてみると、いい匂いが漂っていた。そういえば昨日の夜ご飯から食べてないな、と思った瞬間に空腹感が体を駆け巡った。食卓を覘くと、鍋の中から良い香りが漏れている。そしてスライスされたフランスパンが置いてあり、鍋を開けると美味しそうなミネストローネが入っている。
「このミネストローネ、オレインが作ったの?」
「当たり前だ」
オレインはもう座って食事についていた。私も座って食べ始める。
「へぇ…やっぱり上手だね、敵わないや」
「まぁ一人が長いからな。…もっともお前はもっと料理について勉強するべきだろうがな。あんなもん食いもんじゃねえぇ」
「あんなもんって…おーれーいーんー!!」
「何だ?本当の事を言ったまでだ。がっはっは!」
「こ、こんにゃろう…」
わなわなとスープを掬うスプーンが震える。文句の声を上げようとした時だった、オレインがふぅ、とため息をつき、「そろそろ行かなきゃヤバいんじゃないか?」とあきれた様子で言った。確かにそろそろ行かないと迷惑がかかるだろう。急ぎ早に食事を済ませ、身支度をする。家を出る間際、オレインに「鍵は後で返してねー」と言うと、返答も聞かずに家を飛び出したのだった。
その後オレインの機嫌が悪く、カーズが大変な思いをしたらしい。
コロールで青毛馬を知人から借りて、ここシェイディンハルまで走らせた。
ギルドの中に入ると、まず一番にバーズから(さもいやそうに)声をかけられた。
「何でお前が来たんだ?よし、帰れ」
「帰りませんー。私だってバーズになんかに会いに来るほど暇じゃ無いんですー。大体そっちから依頼を頼んだくせにそーゆー言い方はどうかと思うね。ほんと性格疑うレベルですよ」
そこまで言うとバーズは「あぁ!?依頼だぁ?」と眉間に皺を寄せて叫ぶ。あまりの煩さに片手で耳を塞ぎながら依頼用紙を渡す。それをバーズは半ば奪い取るような形で取り、ざっと目を通した。そしておもむろに舌打ちをする。
「マグリールといい、貴様といい、何故オレインはもっとマシな奴をよこさないんだ」
バーズの言葉に言い返そうとした時、ふとした疑問が頭に浮かびあがった。
「マグリール?誰それ」
その言葉にバーズは驚きの表情をする。
「お前んとこの後輩だろ?何だ挨拶されてないのか?」
バーズのその言葉を聞きながら過去の記憶を探ってみるが、マグリールという奴に挨拶などされた記憶が無い。「挨拶されてないかも…」と言うとバーズは得意げに鼻で笑う。
「はん、ガーディアンにもなって後輩に挨拶されないなんてな。可愛そうな奴だ」
「うるさい!たまたま会わなかっただけだし!それよりもマグリールって奴がどうかしたの?」
「もともとこの依頼を受けてたんだよ。武器を渡してこいって言うまでは良かったんだが、ついでに仲間の手伝いもして来いと言うと、あいつ拒否して依頼破棄しやがった」
「もしかして、マグリールの代わりに依頼をこなせって事?」
そこまで聞くと、バーズは「まぁそういう事だな」と言うとマグリールが破棄した依頼内容を言い始めた。私はため息をつきながらそれを聞いた。
「それを荒涼たる洞窟に居る奴らに渡して、ついでに手伝ってこい。いいか、今すぐに行けよ、このうすのろが」
その言葉に軽く悪態を吐き、武器を持って荒涼たる洞窟へ向かったのだった。
主人公とバーズは仲が悪いといいなぁと思って書いた。何かと互いに競い合っている感じだと思う。